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「市民組織への25の質問」(まちセミ講演録:金子洋二その5)最終回

2013/02/06 

スタジオファイル代表 金子洋二さん講演会

「ミッションからはじめる組織運営」~NPOに学ぶ「思い」と「経営」の両立~ 

 

2012年12月22日 富山国際会議場

主催 NPO法人GPネットワーク

協賛 富山大手町コンベンション

 

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その5

 

市民組織への25の質問

ここからは皆さんにも一緒になって考えていただきたいと思います。お配りした「市民組織への25の質問」と書かれた用紙があります。これは私がこれまで色々と勉強させてもらい、市民組織、NPOへの支援をさせていただきましたので、「市民組織への」というタイトルとしていますがコンセプトはこういうことです。

 

「活動の背景にある思いを大切にし、生かすこと」、ミッションですね。「活動に集まるを大切にし、生かすこと」「抑え合うのではなく、高め合う仕組みがあること」、この3つのコンセプトをもとに、25の質問にまとめたものです。新潟県内で、組織運営に関わるコンサルティングをNPOにする際、一旦このアンケートを先に答えてもらい、どの部分が今出来ているか、どの部分が弱いかを見た上で、本当の課題がどこにあるかを嗅ぎ取るために使っています。講座の中で利用したりもします。

 

組織運営に必要な4つの力

この25の質問には構成がありまして、組織運営に必要な4つの力、4つに分けて考えています。一つ目が「理念志向力」。その団体の掲げる理念に向けて顧客をきちんと把握していて、それに応える事業を展開出来ているかどうか。それを問う質問が最初の10項目です。次の5項目というのが「共感形成力」。その思いを核に共感を広げる力がその組織にあるかどうかをお伺いしている。三つ目の5項目というのが「自己変革力」。新陳代謝ですね。組織として新陳代謝できる仕組みが備わっているかどうか。最後の5項目が「意思決定力」。非常にNPOは危ういところがありまして、ともするとみんなでやることを第一にするあまりいつまで経っても決まらないとか、いつまで経っても動かないということになりがちですね。その中でタイムリーに物事を決め、判断して動く、柔軟性や迅速性というのがNPOの民間組織であるメリットだと思います。みんなでやるという一言で鈍ってしまうことがあるので、そうならないように、重要な質問を5つ挙げました。

 

実際にこれから11個私がお尋ねしていきますので、自分が所属している組織、自分が一番把握している内実が分かる組織を思い浮かべていただければいいと思います。行政職員の場合は自分のいる課くらいの単位がいいでしょうかね。自分のイメージしやすい組織でOKです。大きい会社の場合はご自分のチームとかセクションとか、NPOに関係する方はその組織で思い描いて下さい。一個一個質問しますので、それについての皆さん自身の満足でもって1~4の数字に○をつけていただきたいです。4が一番高い満足度、全然だめだと思ったら0です。普通という選択肢はありません。良いか、悪いかになっています。1、2が悪い方で3、4がいい方ですね。

 

まず理念と顧客について質問です。直観的に答えるといいですよ。

1.組織の理念は明確であり、構成員間で共有されている
2.だれのための活動で、何が求められているかが明確である(第一の顧客の話)

3.活動を進める上で、だれのどんな協力が必要か明確である(第二の顧客の話)

4.上記(2)(3)の相手と十分なつながりがある。(情報交換や信頼関係など)

5.組織の理念は時代の変化や社会の現状に即したものである(時代とのマッチ)

次に理念に向けた事業についての質問です。

6.現在行っている事業は理念を実現する上で適切なものである

7.事業の成果目標がスタッフ・役員で共有されている(理念に至るまでの設計図)

8.活動に関する中~長期的なビジョンがある(設計図がそもそもあるか)

9.事業を遂行するために必要な人材は確保できている

10.事業を遂行するために必要な資金は確保できている(長期的に考える)

次に共感形成力についてです。組織(共感形成)

11.情報の共有と発信のしくみが整備され、機能している(機能しているか)

12.建設的な会議ができている(新しい価値が生まれているか)

13.各事業の担当者が孤立せず、互いに協力し合っている

14.成功を評価し、次の成功を誘発している(プラスの連鎖)

15.通常業務の他にも活性化を促すコミュニケーションがある(これが意外と大事)

自己変革力に関する質問についていきます。組織(自己変革)

16.新しい提案がしやすく、実行に移しやすい

17.失敗やクレームが業務改善に生かしている(批判を受け止め改善に役立てる)

18.定期的に活動をふりかえり、課題が明確になっている(課題なく目標定められない)

19.組織・財務・事業に関する情報が開示されている

(情報公開・経営が判断できる資料。事業計画・報告、財務諸表、予算結果等。情報を開示しないと入ってこない)

20.次世代の人材発掘・育成を積極的に進めている

残り五つです。組織(意思決定)

21.意思決定は速やかに行われている(意思決定のスピード。タイムリーな意思決定)

22.意思決定が一部の人間に集中していない(独占状態になっていないか)

23.意思決定に必要な情報が十分にある(意思決定にする上で必要な情報が集まるか)

24.意思決定における役割分担が明確で、尊重されている

(船頭が多くて難儀していないか。役割分担に基づき意見が尊重されているか。)

25.意思決定のミスをフォローできる体制がある

(失敗はその人のせいではない。組織がフォローして吸収することが大切。改善して成功につなげる。)

 

どうですか。できましたならば、小計を出していただけると助かります。1から10、11から15、16から20、20から25までで小計を出して下さい。計算していただいている途中ですが、この質問をしている背景を別紙にまとめています。25の質問と想定される課題を示しています。自分が○をつけて点数が低かったものに目を通していただき、陰にはこういう課題があるのではないかということです。これだけが全てではありませんが、簡単にまとめたものです。皆さんいかがでしたでしょうか。

 

面白いことに、コンサルティングするときに組織に回答をお願いするのですが、3人に書いてもらいます。代表の人、現場の責任者(NPOなら事務局長、施設長)、若手の中堅スタッフです。お互い結果を伏せてもらい出してもらうのですが、全然違うのですね。意識のギャップを見ることができます。

 

一番厳しく点数をつけるのが現場の責任者です。事務局長とかです。一番何に困っているかを日々実感しているのでしょうね。一番甘い点数をつけるのが代表者です。理事長さん、会長さんとか社長さんですね。よかったら皆さん色んなところで使ってみて下さい。ということで残り15分ほどは、質問タイムということでどうぞ、ぜひお願いします。

 

<質疑応答>

Q1.具体的な実践の話がなかったと思いますが、実際の話を聞かせていただきたいです。

A1.たくさんあります。どんな切り口からお話したらよいかというのがあるのですが。

Q1.それならば点数をつけていて一番厳しい結果となったのが資金的な問題ですね。事業に生かすための資金の集め方、組織を維持するための資金繰り、代表はボランティアでいいですけど、実務をやる人は定期的な給料が必要ですので工面の仕方という組織づくりの問題を聞きたいです。

A1.ぜひ個別のテーマについても今後お招きいただけたら幸いです。資金面でみるとGPネットワークさんがとても素晴らしくやっていると思います。大懸さんから先ほどどのようにやっているのかを聞いていたのですが、主には会費とこのセミナーチケット収入で、専従スタッフも置いている。すごいですね。

Q1.今年はいいが来年が問題である。

A1.資金繰りの手段についてバランスがとれている。会費の収入は極端に年によって上下しない。自主事業でチケットを売り上げて、それを収入としているわけですからある程度、来年も予測しやすい。そこで得た収入は自分たちの思うように使える。そうではないNPOは委託だけで食べている。補助金をつなぎ食べているNPOは、毎年同じお金が入ってくる保障がない。行政が方針を変えてしまうと終わってしまう。そういうNPOもたくさんある中で、自主事業の収入、会費収入をしっかり基盤ともっていて、専従スタッフも雇っていて、お手伝いする人にもちょっとした手当も出るというバランスのとれた形でやっていると思いました。

 

一番強いのは寄付金と会費収入をしっかりとさせることですね。そこで基盤をある程度しっかりとつくる。あとプラスアルファでコミュニティビジネスを展開できる団体であれば自主事業をするのが次のおすすめです。新しいことをはじめたい、新規事業を立ち上げたいときに助成金や補助金をその都度、明確な目的でとってくるというのが一番よいのではないかと思います。

 

行政と一緒にやるときはよっぽど自分たちでやりたいことが一致したときですね。組むことでお互いにメリットがあるときに仕事を受ける。下請じゃないぞということですね。対等な立場でパートナーとしてやるという土俵で物事が考えられたときにそういう関係が成り立つと思います。

 

私のやっている団体はいろんなタイプの団体があります。完全に無償ボランティアで、みんな手弁当でできる範囲で上手に組み合わせ、寄付金や会費を中心にやっているところもある。NPO協会は9人ほどスタッフがいるのですが、主体にやっているものは委託事業です。ただし委託事業の中身はこちらから提案したものばかりです。基本的に国に対してもこちらから提案してとってきているものですので、上から降ってきたものを受けることはない。その団体にあったやり方でしょうか。大事なのはそこで何をしたいのかということ、組むべき相手は誰なのか。というところでしっかりと話し合って、事業計画だけでなく、資金計画についてもしっかりと組織内で議論することが大切です。

 

Q2.主催しているGPネットワークの京田です。このセミナーは、会費をいただいて運営していまして、富山では珍しく有料で会費をいただいてやるセミナーです。有料にしてから参加者が真剣になり、参加者数が増えました。以前は、行政が開催していて無料でやっていたのですが、行政がやめると聞いてせっかく続けてきたものをやめるのは残念なので行政の支援を受けないでやることにしました。

 

今日も参加をいただいていますが、この会場の富山国際会議場から会場費を上回るような多大なご支援をいただいております。会場費は払っているのですが、一方で会場費を上回るご支援をいただいているので成り立っているというところがあります。多分それがなくなったりすると参加費用の負担を見直す必要が出てくるのではないかと思っているがそれでも続けていきたいと思っています。

 

それから専従スタッフを雇っていますが、提案型事業を国の予算をいただいてやっており、その中で専従のスタッフを雇っている状況です。さきほど先生にお話いただいた内容と変わらない、非常に不安定な状況であるというのはその通りです。

 

事業を多く取り組んでいますが、名前がGPネットワークと言っていますように今日のお話がありましたピラミッド型ではなくネットワーク型の組織でやろうということで色んな事業にそれぞれ責任者、担当者がいて、やりながらゆるやかにつながってお互いに協力していきたいという思いでつくっている組織です。

 

今年いる専従スタッフ一人を除いて、基本的には皆どこかの組織に所属している会社員だったり、公務員だったり、いわゆるサラリーマンとして通常働いています。ほとんどピラミッド社会の中で仕事をしていますから、それがネットワーク型の組織になるとうまく気持ちの切り替えができないのですね。誰かに言われて動くということならできるのだけど、自分たちで中心になってコーディネートしながらうまくそれぞれの個性を活かして色んなことをやっていく切り替えがなかなか難しいだろうなという思いがあります。その辺は先生がやっているNPOでは全員が専従のスタッフではなくていろんな人が関わっていると思うのですが、その辺は、どううまくコントロールされているかを教えて下さい。

 

A2.私は幸い、周りにいる人たちが熱すぎるくらいの人たちが多く、あんまり動かなくて困るということがなく、一番動かなくて困るのはNPO協会のスタッフでしょうかね。(笑)袖から募集して入り、それでも並の組織より動きがいい方だとは思うのですが…。もうちょっと慎重に考えてから動けよと言いたいぐらいに動いてしまう人がまわりにたくさんいるので、私自身はそういう悩みがないのですけど、コーディネーターというのは大事だと話しましたけど、新潟というところは、大懸さん詳しいので後から聞いていただけたらと思うのですが、コーディネーターの養成というのをものすごく力を入れてやっています。

 

15年くらい前から新潟県が主催でコーディネーター養成講座を実施しています。講座の中身を用意するのが私たち市民団体なのですが色んなところで勉強してテキストもまとめ上げて、今日そのテキストを持ってくるのを忘れてきたのですが、マチダスというテキストがあって新潟からも取り寄せることができます。まちづくり学校で検索いただけると出てきます。18期になります。毎年1回か2回ずつ1泊2日を三回くらいの6日間連続のカリキュラムです。大懸さんもそこの卒業生です。

 

そこに来る人たちは、市民団体に所属する人、商店街の人たちだったりしますが、半分近くが行政の方なのですね。卒業生が500人以上いるのですけど、県内どこの行政の窓口、どこの課に行っても大体話が分かる人がいるという状況になっています。信頼関係があります。「養成講座の卒業生だよね。」というだけである程度つながるものがある。協働というものに対する同じような認識を持っていたり、まちづくりの原則をお互いに分かちあったりする。何かを確認しなくても共有できるものがある。そういうものに助けられているというのがあるのではないかと思います。

 

それもお金をかけてやっていないですけど、予算的には多分このセミナーと同じような感じではないでしょうか。まちづくり学校のスタッフはそれに関して完全にボランティアでやっています。宿泊費とか交通費とか、外から呼ぶ講師とかの必要な経費だけはそこから出しています。これは絶対に無くしてはならないつもりです。実は県がその事業をやめたのですが、今度は自主事業で参加費をもらいやろうじゃないかと切り替える予定です。コーディネーターなのでしょうね。育てること。

 

Q3.非常に興味深く、お話を聞かせていただきました。私は一般の企業でコンサルタントをやっているのですが、一般企業でこれだけ収益性が低い中、経営者が心折れないためにも、従業員のモチベーションをもってもらうためにも、人であったりミッションであったりということ、私も言っているのですが、今日のこのアンケートは非常に一般企業でも使える有益なことが多く勉強させていただきました。ありがとうございます。改めてお聞きしますが、お聞きしたいのはまちづくり活動をされている中で、一般の企業の方と接することも多いと思うのですが、やっぱりNPOだからできること、NPOにしかできないこと、もしくはNPOはこんなところが面白いのだということを改めて教えていただきたいです。

 

A3.NPOのメリットは確かにありますね。NPOというだけで、みんなが何か世の中に良いことしようという前提があるだろうと思ってくれる。企業と実は変わらないのですけどね。NPOを名乗っているだけで最初からそう思ってみてくれる。デメリットは、「あんたらボランティアなのでしょ。」と言われることですね。お金のやりとりに関わる話になると、「NPOなのにお金をとるのか!」と言われる。メリットがあります。何と言っても寄付金を集めたり、ボランティアを集めたりしやすいということが最大のメリットですね。寄付金が集めやすいのですが、集め方を知らないNPOが多いですね。一生懸命そういうところを何とか伸ばそうと思っています。もったいないですね。せっかくNPOという看板を掲げているのにもったいないなと思います。寄付金もボランティアを集めない。そこをきちっとマネジメントできるようになると面白い商売だと思いますね。

 

可能性は無限だと思います。NPOの特長を取り入れてやっている企業もあります。新潟で親しくさせてもらっている企業ですが、子育てを応援する、「全ての子どもに笑顔を」というミッションで、マーケティングをやっている会社です。まちのなかのお店とか会社とかで、子育てに配慮しているサービスや特典などを持っているところから広告をもらってその情報を共有するという形で事業を成り立たせています。その情報が欲しいので8万世帯会員がいる状態です。企業がやっている非営利目的の事業の応援団です。その企業に現在お願いしているのが、私のやっている新潟国際ボランティアセンターにおけるベトナムに学校をつくるプロジェクトで、資金を寄付金で集めるため、「会員さんに呼び掛けて集めてくれませんか。」とお願いし、会報で広告の面を使ってもらい無料で掲載して、それを8万世帯に撒いてくれるわけですね。

 

そのような形でお付き合いさせてもらっている企業もありますので、本当にNPOだから、企業だからなんだということは実はないのだというのが、今日の話の続きになるのではないかと思います。

 

Q4.楽しいお話ありがとうございました。今までNPOのマネジメントに関わるお話を聞いて、金子さん自身が何個かNPOをやっていると聞いていたのですが、NPOの大切な想いということで、金子さんが世の中をどうにかしたいという想いというのは、どういう想いなのかを教えていただきたいです。

 

A4.最後に核心的な質問ですね。(笑)あなたのその想いは何なのだという話ですね。色んなことに首を突っ込んで何を思ってやっているんだという質問ですね。最近になって気付いたようなお恥ずかしい状態ですが、思い出せば昔から言っていたなと思うのですが、「人が生きる、人が生きられる社会をつくる。」ということですね。人は全てボランティアであれ。きちんと説得力を持って響くような、そんな社会と自分の実践を作り上げていくというのが目的です。ちょっとかっこ良すぎましたかね~。(笑)いい質問を最後にありがとうございました。

 

おわり

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