お知らせ

「組織の形について」(まちセミ講演録:金子洋二その4)

2013/02/06 

スタジオファイル代表 金子洋二さん講演会

「ミッションからはじめる組織運営」~NPOに学ぶ「思い」と「経営」の両立~ 

 

2012年12月22日 富山国際会議場

主催 NPO法人GPネットワーク

協賛 富山大手町コンベンション

 

その1に戻る

その2に戻る

その3に戻る

 

その4

 

組織の形について

もう一つ話をしておきたいのが、組織の形についてですね。スタッフの皆さん、職員の皆さんの話になるのですけど、大体組織というとどのような形を思い浮かべるかというとこのようなピラミッド型を思い浮かべますよね。これも大学の授業でやるのですが、最初に何も言わないで、組織を図に描いて下さいというと10中9人がピラミッド型のものを描きます。

 

学生たちに、「卒業したら皆さんもこの中に入るのですよ。」と言っています。「どこからスタートするか分かりますか。一番下の一番端っこのここからスタートするのですよ。」と話します。「どういう状況か考えてみて下さい。常に上司からは遅いとか、要領が悪いとか、態度が悪いとかそういうプレッシャーを受け続けて、たまにうまくいって成功したと思ったらその成功を上司が自分のものにして上に報告したりする。そういう世界に突入していくのだよ~。」とそんな簡単な脅しをするのですね。ピラミッド型の組織を捉えるとそういう力が働きやすいと言えるのではないかと思います。

 

上位下達。下からはあまりいいものは上がっていかない。上の論理でもってすべて進んでしまう。そうしたときにみなさんハッピーですかというとみんなハッピーとは言いません。そこでまたもう一つ別のお題を出すのです。「その組織に属する人がみんなハッピーでいられる、それぞれのいいところを思い活かしあえるような組織を図にして下さい。」というと違った色んな形が出てくるのですね。それは10人いれば10通の描き方をします。

 

割と多いのがこのタイプです。私たちの出しているまちづくりのテキストの図をそのまま持ってきたのですが、ネットワーク型の組織です。真ん中にコーディネーターがいるのですね。上司ではなく、コーディネーターです。周りの人たちのいいところ、持つ情報、得意なもの、個性を引き出して組織全体の仲介役になる。適材適所を図り、個性を活かすための存在です。会社等での課長や部長がこの役割を果たすとすごくいいと思います。決してただ偉いわけじゃない。コーディネーターを核としたネットワーク型組織というのが実際はNPOでこのようになっているのだと思います。ボランティアコーディネーターもこのような図になりますね。こういう形が人を活かすものになるのかなと思います。

 

組織考について

~仕事を楽しくするのは共感力~

仕事を皆さん楽しんでやっていますか?大懸さん楽しいですか?はい、楽しい!と頷きました(笑)後ろに上司がいるので頷かざるを得ないですね(笑)大懸さんは楽しいと思います。学生のときから常に楽しいこと、好きなことをやっていましたからね。その秘訣がないかなって考えたのですが、それは共感することだと思います。仕事の中で色んな人たちとコミュニケーションをとる、組織内外でコミュニケーションをとると思いますが、ただ単純に用件だけを伝えるだけでなく、自分がどう感じているか一緒に伝えるとか、どうしてそれを伝えたいのかということを伝えると共感力は高まります。

 

言ってみればお互いがわくわくする気持ちを通じ合わせること、それが器用な事務局がいるとすごく動きがいいですね。まさしくコーディネーターの資質の中心的なものだと思います。共感する力がズレてくると組織というのは非常に風通しが悪くなるし、つまらないものになると思います。

 

やる気の三要素:前進・方向性・参加

よくこれも聞かれるのですが、「スタッフがなかなか本気になってくれない。」、「やる気になってくれない。」と言われますが、組織を経営しているあなたはこういうものを提供していますか。みんなで動いていることによって、目的に向かい前進していますか。前進していてもその前進している成果を共有できていますか。どちらに向かい前進しているかを共有できていますか。

 

もちろんミッションからはじめるのですけど、ミッションはある程度抽象的なものですから、それよりももう一段階具体的なビジョンが必要です。3年ビジョン、5年ビジョン、10年ビジョン等で方向性を共有できているか。ちゃんと参加を保障していますか。

 

よくNPOが陥りがちなのが、「参加してもらって本当にありがたい!」はいいのですが、申し訳ないみたいになってきてしまうのですね。参加する人たちをお客さんにしてしまうのですね。「ようこそありがとう。また来てくださいね。」というのはいいですけどそうじゃない。やりたいからやるというのがNPOの鉄則ですから、さきほどの共感形成の3つのステップのどこの状態であっても同じだと思うのですね。

 

やる気があってちょっとでも顔を出してくれる人をお客さんにしてはいけない。みんなを主役にしてあげないといけない。その人の力を活かすこと、そういう役割を与えることができていますか。前進・方向性・参加というのは、やる気の三要素ということです。

 

~やりたい気持ちに主客はない~

これもNPOも会社もそうかもしれません。悩みの王道なのですが、「活動の継承者がなかなか現れない。生まれない。」ということです。そういう人たちがどういうところで、誤解をしているかというと、「せっかくここまで組み立てたいい活動、成長した組織を受け継がないというのはなんてバカなのだ。お前たちは!」と思ってしまうのですね。これもある意味で受け継ぐべき人たちをよそ者として扱っている。やりたくて集まっているその人たちのやる気でもって受け継がせないといけない。その人たちなりのやり方もあるでしょうからそれを見い出しつつ、組織経営者は、築いてきたものをどうやってうまく使ってくれるかに骨を折ればいいわけです。

 

~受け継ぐとは、次の人が新しくやりたいと思うこと~

受け継ぐということはこれまでの実績や業績を押しつけるのではなく、次の人が新しくやりたいことをさせること、やりたいと思わせることです。その人たちの気持ちにストップをかけしまうと受け継ぐことができなくなる。それが組織の新陳代謝です。でも理念とかビジョンが共有されていれば、反れることはないのです。それがあってのこの言葉です。

 

~人は自ら動く者のために動く~

これも私の恩師から言われたことなのですが日々実感します。色んな団体の代表をやって、スタッフ等に「やりたいようにやって。」と言っているのですけど、中々やらないですね。自分もアクセクしないといけないのです。自分のやり方を押しつけるわけではないのですが、おれも本気になってやっているというところを見せないと誰もついて来ないですね。「新しくやりたい!」と次の人たちが思うまでには、魅力的にいきいき楽しんでいる今のボスがいるのですね。その人がいるから自分も育とうと思って、次にその組織を自分なりにやってみようとはじめて思ってくれる。自分もアクセクと汗を流して、飛び回る。

 

私は、「仕事」とひとくくりに言いますが、半分以上が無報酬のボランティアです。同じことをやっているのだけどお金をもらったり、もらわなかったりします。必ず何かに役立つと思って手は抜きたくないですね。お金をもらう、もらわないに関わらず。自分のやりたいことをバカになってやって、辛うじてつなげとめられているところがあると思います。自ら動かないと他の人はよそに行きますね。他を見てしまいます。

 

~コラボレーションは役割分担~

一緒にやると考えた時に、コラボレーションとよくいいますが、単に一緒にやるだけじゃなくて、役割分担がきちっとされているかの話ですね。組織の中でのコラボレーションもそうですが、行政とNPO、企業とNPO、企業と行政とみてもそうですね。非常に危ういのがNPOと行政のコラボレーションで、行政って何でもやってしまうのですね。日本の行政は仕事をしすぎるのですね。

 

これもバブルのツケなのですね。市民がやる前に何でもやってしまうのですね。主導的な立場をとってしまうのです。まだ市民がそこまで成熟していないからというのもあるかもしれませんが、NPOと行政がやるときも立場的に行政が上に来てしまうということが多々ありまして、そこのところの役割分担を認識しておかないといけない。市民が本来やるべき作業があり、そこは市民に育ってもらう前提で協働するという姿勢で随分関係性が違います。そこの役割分担を認識した上で協働してもらいたいと思います。

 

最終回 ~市民組織への25の質問~ に続く・・・

 

ページの先頭へ