レポート

まちづくりセミナー2012

第3回講演録 講師:金子洋二 スタジオファイル代表

2013/01/29 

「金子洋二」さん講演会

「ミッションからはじめる組織運営~NPOに学ぶ「想い」と「経営」の両立

 

                 2012年12月23日 富山国際会議場

                 主催 NPO法人GPネットワーク

                 協賛 富山大手町コンベンション株式会社 

 

 

はじめに

みなさんこんにちは、お初にお目にかかります。新潟から参りました金子と申します。

 

今日はまちづくりセミナーの第3回ということで、お声掛けいただきましてこのような機会をいただき嬉しく思っております。拙い話ではありますが、最後までお付き合いいただければと思います。事前に色々と相談させていただいて、どういうテーマで話をするかを色々考えたのですが、こんなテーマにさせていただきました。

 

「ミッションからはじめる組織運営~NPOに学ぶ「想い」と「経営」の両立~というタイトルです。どんな方が参加されているか詳しく聞いていませんが、NPO法人主催ということでNPO関係、行政関係、企業関係の方々がいらっしゃるのではないかと思います。

 

このタイトルにNPOという言葉がピンとくるのか不安の種でした。そもそもNPOってどういうものかご存じでいらっしゃいますか。会場の雰囲気でおおよその感じが分りました。日常でよく耳にするという反応ではないかと思います。

 

「組織運営」、もっと大げさに言うとタイトルの下の方にある「経営」という言葉があります。「経営」というものに関してNPOを重ねて考えたことある方がいらっしゃいますでしょうか。どうやって「経営」を語るのかとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、それをちょっとずつ話していきます。

 

自己紹介から講演の本筋へ

スタジオファイルという個人事務所をやっておりまして、言ってみれば一つの事業体の代表、社長みたいなものかもしれませんが、プータローと紙一重みたいなところがあります。定職なく自分の好きなことをやり、仕事の内容としては地域づくりやNPOの設立や運営のお手伝いをし、時にはこのような講演や大学の講義もやるなど、そんなことで食べているちょっと変わった仕事をしております。

 

主な役職としては新潟NPO協会代表理事で、今から約11年前に組織を立ち上げました。また新潟国際ボランティアセンター代表で、私が市民活動に入るきっかけとなった組織なのですが、当時の指導教官が大学生時代に立ち上げたものですから市民活動に有無を言わさず関わった。それ以来ずっと市民活動を続けており、やっているうちに新潟県NPO・地域づくり支援センター代表、新しい公共新潟会議代表などまちづくりに関するお手伝いをしています。まちづくり学校というNPOが新潟にありまして役員をしております。

 

20個くらいの民間の非営利組織で活動をしています。多くは役員や代表だったりしますがほとんどが無報酬です。決まった役員の手当てが一切ありません。NPOの役員というのは基本的にボランティアというのが日本の国でも、世界でもスタンダードだと思います。一番組織に貢献すべきはボランティアであるという考えがNPOの場合にはありまして、そういった形で活動しています。

 

何で食べているのか、何でしょうかね。霞とでも申しましょうか。新潟一霞を味わえる男というのを目標にやっております。(笑)本当幸いに、不思議なことに色んな活動のお手伝いをしているとお仕事をいただきます。時にはコンサルティングのような仕事もあれば組織運営のお手伝い、講演等を中心に色んな仕事をしていると食べていけるという状況です。

 

新潟でも中々いない幸せな人間ではないかと思っています。「中々うまいことやっているな。」と言ってくださる方もいらっしゃいますが、なぜこのようなことになったのかと、この講演のお話を頂戴したきっかけに考えてみました。

 

大学卒業時期、青年金子は悩んでいた

私が大学を卒業したのは91年。会場の中に同じくらいの世代の方はいらっしゃいますかね。ぎりぎりバブルの終わりくらいに引っかかりました。バブルの末期というのはバブルがはじける寸前なので膨張するだけ膨張していたのですね。非常に就職はよかったですね。今の若い人たちに申し訳ないくらい。当時は本当ここ行きたいと思えば、どんな一流企業でも公務員でもなりたいと思ったものになれるようなそんな時代でありました。

 

毎日家に帰ると束になってDMが届くわけですね。今の学生さんには申し訳ないですが、私(青年金子)は迷っていたわけですね。将来何をしたらいいのか分からなくなりました。どこの会社も「来てくれ!来てくれ!」、「一回温泉旅行に連れてってあげるからぜひ参加してくれ!」と言うようなそんな時代でした。「どこにも行きたくねぇなぁ。」、「就職したくねぇなぁ。」と悶々としていました。

 

公務員はどうか。当時の私は市民活動に首を突っ込んでいたこともあって、非常に退屈な世界に思えたのですね。ルーチンワーク的なイメージしかなく、そんな世界に入っていくのは真っ平ごめんだと思いました。だからと言って、企業に就職するのはどうか。企業に就職するとなると、競争で相手を蹴落として自分だけ儲かればいいような社会の歯車となって参加するのか。そう思うと若い私にはどうもしっくりこなかった。生意気にも、経験もしないで強くそう思いました。

 

迷いに迷って挙句の果てに休学して留学したりなんかして、時間稼ぎをしても迷いが消えなくて、自分が働くことで社会に役立つこと、貢献していることが感じられるような仕事とは何だろうかと、大真面目に当時から市民団体について考えていました。

 

当時はあまりNPOという言葉はなかったのですが、NGOという言葉がありました。そのNGOに働けないかと真剣に考えました。つてのあった東京のNGOに訪問しましたが、非常に狭き門。東京で働いている先輩の話を聞いていると月給16万円で、それだけでは食べていけなくて、夜中にコンビニのバイトをして、なんとか生計を立てているという話を聞きました。私と同じように考える若者はそれなりにいたらしく、入りたくても求人一人か二人に対して、四十人くらいが殺到するような状況でした。

 

「これはダメだ。無理だ。」と思って観念して一旦は就職しました。地元のちょっと大きな、商社のような会社で、随分と好きなことをさせてもらいました。社長の側近として中国への投資をさせてもらったり、会社をいくつか立ち上げたり、若いながらに非常に貴重な経験を積ませてもらいました。非常に期待もされてありがたい限りだったのですが、やってくうちにどうしてもしっくりこなかったのですね。若気の至りというのでしょうかね。「何の役に立っているのだ、おれは。お金を稼ぐことばかり考えて」と思い、ストレスまみれの仕事を毎日繰り返していきました。

 

そこで先ほど不思議な経歴の中に一つ、農業というのがあったと思います。米をつくってみようと思いました。新潟ですから、「米をつくれば間違いなく人に役に立つ!」と非常に単純で安直な発想でしたが、農業をやってみました。もちろん一から自分でやる力がないので、会社で農業を大々的に展開している先駆的な農家に弟子入りして米をつくりました。

 

そこで米の世界も綺麗ごとじゃすまないということが分かりました。農業関係の方がいらしたらご存じだと思います。そんなに思うようにいかない。いくら有機栽培だとか言っても売れないと話にならない。売れるためにはちょっとこすい事いうとあれですけど色々工夫する。そんな中でも細々と先駆的な社長が頑張っているのが分りました。

 

そんな中でタイミングよくと言うか何と言うか、農作業が重労働じゃないですか。腰を思い切り壊しまして、ちょっと休んでいる間に新潟でまちづくりをやっている連中から声をかけられたのですね。「お前なんかやりたいことがあれば、俺たちとやってみないか。」と。

 

物事を成功に導く絶対的な原動力

それで、ある組織の事務局を任されて、やっていくうちにこんなに面白い世界はないなと、そこで市民活動とかまちづくりの世界に目覚めて、今日の話につながってくるのですが、やっていくうちに「会社よりも面白いぞ!」と思い始めたのですね。経営という面でみても。ちゃんとお金が動くのですよ。地域活動のまちづくりも。ボランティアをやりながらもお金は動くところで動くのですね。しかもそれに関わっている人たちは目の色を輝かせて、夢中になってやっている。面白そうにやっている。そのパワーというのが物事を成功に導く絶対的な原動力だし、それを極めてみたいと思ったのですね。

 

その想いが高じて「NPOの先進国ってどこだろう。」と思い調べると、「どうやらアメリカがすごいらしい。」とそう思いましてアメリカに渡りました。半年間ではあったのですが、アメリカのペンシルバニアのNPO協会というところにオン・ザ・ジョブ・トレーニングで働きながら、NPOの支援、NPOが世の中で活躍する仕組みがどのようにできているかを勉強させていただきました。

 

ペンシルバニアで勉強して帰ってきて、新潟のNPO協会を仲間と立ち上げました。折しもその一年、二年後くらいに新潟県がNPOサポートセンターをつくるということでそこのセンター長を就任し、色んな形があると思いますがNPOの支援は行政がやるよりも民間で自立してやる方がいろいろと動きがいいだろうと思い、新潟県NPOサポートセンターを3年で閉鎖しました。

 

新潟NPO協会は民間で自立してやっています。新潟NPO地域づくり支援センターというのも先ほどプロフィールがありましたが、そちらも民間の団体です。新潟NPO協会とまちづくり学校という二つのNPOが合同で設置している、NPOと地域づくりのための支援センターですね。したがって新潟県はNPOの支援センターを持っていません。民間で運営しています。ますます色んな事に気がついてきたのですね。

 

経営学の神様ドラッカーが説く

NPOの経営って面白い、面白いに違いないと気付いた言葉がこちらです。ドラッカーはみなさんご存知でしょうか。経営学の神様です。もうお亡くなりになりましたけど、アメリカに行ったときにもドラッカー財団というところの研修も受けさせてもらいました。経営学の神様が晩年、研究に集中されたのが非営利組織なのです。非営利組織のマネジメントです。残した言葉が「非営利組織にこそマネジメントの本質がある。」ということです。

 

「本当かなぁ。」と私も最初は思いましたが、日本に帰ってきて、いくつかの非営利団体を立ち上げたり、関わったりしてやっていくうちに、「これは本当に間違いない!」と思うようになりました。いろいろ経験して、気付いたことを蓄えてきました。今日はその話をさせていただきたいと思います。ダイジェスト版としてご紹介させていただきます。

 

非営利組織(Nonprofit Organization)の材料(NPO=人+想い+仕組み)

非営利組織とは何からできているのか。ちなみにNPOって普通多くの方はNPO法人のことだと捉えられるかもしれません。NPOという言葉には、あまりしっかりとした定義が日本にはないですね。民間の非営利組織のことを総称的にNPOといっているだけですので、言ってみれば、市民団体、法人格あるなしに関わらず、市民が主体となって運営している組織のことをNPOといいます。

 

NPO法人というのはその中のごく一部と捉えていただけたらと思います。そのNPO、非営利組織というのは、何から出来ているかというと、「人」と「想い」と「仕組み」から成り立っていると言えるのではないでしょうか。

 

まず「人」というのはなんと言ってもNPOの第一の財産と言えるのではないかと思います。NPO法の中にもNPO法人は基本財産を持ちなさいという決まりは一切ないですね。お金がなくてもつくれるのがNPO法人。その代わりに仲間を10人集めなさいという法律になっている。想いを同じくする人を10人集めれば法人格をとれる要件としている。人を宝としている法律がNPO法なのですが、NPO組織の根本的な概念です。

 

人が集まって、その重なる「想い」をミッション、組織の理念にして成り立っている事業体ということですね。集まっている人たちの想いが重なる部分、言葉を変えると理念とかミッションとか、柔らかい言い方をすると組織の目的、定款には目的と書いてありますね。

 

そして人と想いを継続的に活かしていく「仕組み」があって、それら3つがそろってNPOと言える。これが基本的な構造なのではないかと考えています。そうなると必然的に非営利組織の運営のポイントとは、単純ですけど、人と想いを活かす仕組みをつくることということですね。言葉で言ってしまうと単純ですが、これが極意だと思います。

 

人と想いを活かす、仕組みをつくること=共感のマネジメント

いかに人と想いを活かす仕組みをつくるか。もうちょっとかっこよく言いかえると「共感のマネジメント」という言い方をしている。「共感のマネジメント」とは活動の中心である想いを共感に変えていく。共感を広げていく。広がっていった共感から運営資源を得る。

 

これが非常にシンプルに言った時の非営利組織の運営、経営のポイントです。想いを共感に、共感を資源にということです。

 

 

「想い」(理念・ミッション・目的)について

~カメはどうしてウサギに勝てたのか~

この前提で進めていきますと、まずNPOの心臓部ですね。想いについて、いろいろ考えてみたいと思います。言い換えれば理念とか、ミッションとか、目的とか、どういう働きをしているのか。これがなければNPO、市民団体がそもそも成り立たない。

 

これがあるからこその活動であるという話なのですが、ちょっとここでクイズです。ウサギとカメの童話はご存知ですよね。勝ったのはどちらでしょうか。カメですよね。まともに考えれば、カメがウサギに勝つことは考えられないのですが、カメが勝ったという話になっています。どうしてカメはウサギに勝てたのでしょうか。この物語は何を伝えようとしているのでしょうか。

 

ちょっと水を飲ませていただきますので、1分ほど周りの人と相談してみて下さい。どうしてカメはウサギに勝ったのか?(~シンキングタイム~)はい、こんなの分かっているよという雰囲気もあります。どう思います?どうしてカメが勝ったのでしょうか。

 

「ウサギはカメをみて勝負したのですが、カメはゴールをみて勝負していた。」(受講生)

 

すごいですね。富山の方ってすごいですね!相手は競争相手をみてレースを運んでいたのですが、カメはゴールに到達するという目的、つまりミッションですよね。ミッションだけをみつめて歩み続けた。だから勝てるのだよということを教訓としている。

 

よく言わるのはウサギが油断して自分に慢心があったから負けたと言われ、一方カメは遅い動物だけど直向きにがんばったから、一生懸命努力したから勝てたというそういうことを教えてくれるという感じで伝わりがちなのです。まともに考えれば、カメはウサギに勝てるなんて思うはずがない。ウサギが競争相手だと思うと勝てるわけがないのですが、言い換えてみれば内なる自分との闘いだったと思います。自分の中にある目標だけに向かってあらゆることを考えたから競争しようと言ったのではないかと思います。

 

それだけ理念というものをぶれずに持つことが可能性を秘めているのだということが色んなところに書いてあります。

 

ミッション考

~使命とは、「命」を「使う」こと~

ミッションについて、ミッション考となんて言って雑感に近いですけど、いろいろ考えてみます。まずミッションを日本語に訳すと使命と訳しますね。使命という言葉をどう書くかというと「命を使う。」と書くわけです。命を使う。皆さんこれすごく大袈裟に聞こえるかもしれませんけど、あたり前の営みでもあるわけですね。もっている命を思い切り使うということです。言い換えれば命ある人というのは皆使命を持っているということです。

 

言葉遊びのように感じるかもしれませんがすごく基本だと思うのです。命を使うことで生きている。それは特別なことではなくその自分の命をどのように使うかを意識出来ているかどうか。それをミッションという言葉が問うと解釈すればよいのではないかと思います。

 

~何をすべきかじゃなく、何をしたいか(ニーズに振り回されない)~

その中で大事なのが組織を運営していると何をしなきゃいけないのかなと考えがちなのですが、何をすべきと考えるのではなく、何をしたいかをいかに考えるかが大事だと思います。よく企業の世界でも、NPOの世界でもニーズという言葉をよく使います。ニーズってすごく大事なもので、大事なものではあるのですが、「ニーズは何だろう、ニーズは何だろう。」と問いかけること事態が、実は根本的に自分がどうありたいのか、自分はどうしたら命を燃やせるのか、何に自分はエネルギーを傾けられるのかというところから離れて膨らみがちなのですね。要はニーズに振り回されることになりがちなのです。

 

ニーズを考える前にまず自分が何をしたいのかということが軸としてあって、その視点からみて世の中にニーズがあるのかを考える方がその人が生きる。その方が自然な考え方ではないでしょうか。ミッションがよく分からなくなるという非営利組織がよくあるのです。よくよく考えてみるとまわりがどう考えるかというところにアンテナはよく張っているのですが、自分たちは何がしたいか共有されていない。その部分が弱いと集まってくる人たちのつながりも危ういものになりますし、長い目でみたときの目標というものも共有しづらくなる。何をしたいかということを先に考えて、その延長線上に何をすべきかを考えるということが順番なのかなと思います。

 

~やりたいこととできることはイコール~

まちづくりとかNPOとか、事業を考えるときに「やりたいこと」、「できること」、「求められていること」の三つの要素から重なるものを考えましょうという言われ方があります。その三つの要素とはミッションですね。使命、想いです。「やりたいこと」、それに対して、「できること」を現実的に考えた時にこんなものだろうと現実的に想像できること、それに対して「求められている」ことは、まわりのニーズということになるわけなのですけども、その考え方も教科書通りで一理ありますし、いろんな講座の中でその論法を使うことも多々あるのですが、あまり健全ではないような気がします。

 

企業とNPOの違いとはどんなところにあるか。もちろん企業というのは営利組織ですし、NPOというのは非営利組織です。営利を目的としないというのがNPOですけども、もう少し深く考えると企業の世界で成功したと考えられるのはどのような基準で考えられるのでしょうか。大体は、平均的な業績を上回った時に、平均以上の成果を出した時に「成果を上げた。」、「成功した。」と言われると思います。

 

ところがNPOはそうではないのですね。NPOは理想が高いわけです。理念を持って、こういう社会にしたいという理想を掲げてやっているわけです。NPOが成功するときはその理想に限りなく近づくとき、常にベストを目指すわけです。平均点というのはないのです。自分たちの理想に到達することを成功としているので非常にハードルが高い。その時に、「やりたいこと」、「できること」を比べてみると、常にできることというのは「やりたいこと」に届かないということになりかねない。

 

これは非常に辛いものがあります。いつも「足りない!足りない!」と思わなければならない。「なかなか成功に結び付かない。うまいところまでいかない。理想に近づかない。」というジレンマがどんどん育ちます。だから10年くらいでくたびれてNPOが潰れたりするのですね。ちょうどNPOがはじまって10年以上経つのですが、そういう現象が起きています。理想ばかり高みばかりみて、それに中々到達できない自分たちと向き合う。

 

それを埋められるのがこの考え方だと思います。「やりたいこととできることはイコール」やりたいことはいつかできることだって思いながらやらないと精神衛生上よろしくない。今はまだ出来ないかもしれないけど、いつかできることだと思い、ミッションを捉えていくことが僕は大事かなと思います。

 

~変えることは、帰ること(変化のとき、それは原点に帰るとき)~

もうひとつ、「変えることは、帰ること」であることです。どういうことかというと組織というのは人間の身体と同じで新陳代謝が大事だと言われますけど、やはり変化しなくなった組織というのは段々硬直化して、マンネリ化して、みんなから飽きられつまらなくなって、段々活性化が鈍ってきて、衰えていって、いずれは潰れていきます。

 

組織というのは放っておくとそうなるのですけど、意識的に新陳代謝、変化を続けることが大事なことだと思います。その時に何か立ち返るべき原点があるかどうかというのは大事なことじゃないかと思います。原点に立ち返るところを反らさずに、必要な変化を遂げるということが、組織に重要な変革になると思います。原点も持たないで、コロコロ変わるというのは会社もNPOも同じだと思いますが、逆に信用を失うと思いますね。ぶらさないところはぶらさないで、変えるべきものは変える。

 

~人は皆、ボランティアであれ(volunteer)~

「人は皆、ボランティアであれ」ということなのですが、「なんじゃそりゃ~」という感じでしょうか。そもそもボランティアという言葉をどのように捉えているかという部分だと思うのですが、私は決して皆にタダ働きをしろと言っているわけではないです。ボランティアという言葉に根強い誤解がありまして、それが市民活動の発展に非常に大きく影響していますのでここで触れさせていただきます。

 

日本ではボランティアというと奉仕活動と訳されますが、語源を辿っていくと、前半の部分の”volo”はラテン語から来ていて、意思という意味だそうです。ボロと発音するそうです。後半の”er”は人という意味を表しています。”Driver”とか”teacher”とかと同じように人という意味になります。語源を遡ると意思を持った人という意味になるのですよね。

 

自ら、自分で何かをやりたいという意思を持っている。そのことをボランティアといいます。これを英単語として辞書で調べると志願者と記されています。自発的に何かしたいと思っている人のことをボランティアと言うのですね。動詞にもなるので「自発的に○○する。」という意味もあるのですが、自発性というものを問うているだけであって、奉仕活動かどうかなんて一切言葉の中に出てきてないのですね。

 

明治期、言葉が輸入された当時の日本では奉仕活動という言葉がピッタリとはまったのだと思いますが、今でもこういった使い方をされると大きな誤解があると思います。奉仕というのは自分を殺して、他人に尽くすというイメージがありますね。高尚なもので生半可な想いでは踏み込めないというイメージがついてしまいます。然に非ずということですね。

 

自分がやりたいことがあり、やることはボランティアなのですね。人に強制されるものではない。学校で子どもたちが奉仕活動とかやらされることがあると思いますが、あれはやらされている以上ボランティアとは言えないわけですね。自分からやりたいことをやる。是非ともそろそろ時代にあった言い回しに変えてもらえたらいいなと思います。

 

使命という言葉をどう解釈するかということにつながるのですが、「人は皆、ボランティアであれ」と思うわけです。たまたま私はやりたいことをやって仕事ができているので幸せだと思うのですが、すべての方にそうあってほしいことだと思います。当時、大学を卒業した時には気付かなかったですけど、どんな仕事であっても人に役に立つからその仕事が存在するということが前提だと思うのですね。そうじゃない仕事があるとしたらなぜそのような仕事が生まれてきてしまったのかを疑問すべきであって、本来仕事というのはボランティアであるべきことだと思うのですね。

 

「仕事ができる。人の役に立つ、だから嬉しい。」自分がやりたいということが本来人間と社会の関係であって、生き方の基本だと思うわけですね。そういう世の中になったらいいなと思うのですが、NPOの世界から社会の中を見ています。

 

~ケネディ元大統領の伝説の就任演説から考える~

皆さんご存じの有名なケネディ大統領ですね。第35代アメリカ合衆国大統領の有名な伝説の就任演説です。「ASK NOT WHAT YOUR COUNTRY CAN DO FOR YOU – ASK WHAT YOU CAN DO FOR YOUR COUNTRY」と聞いたことがある方、どこかで見聞きしたことがある方がいるかと思います。「アメリカという国があなたたちに何をしてやるかではない。あなたがアメリカという国に何ができるかだ。」ということを大統領の就任演説をして絶大な支持を民衆から得た。

 

国づくり、国の運営というものですらボランティアであるというわけです。自分たちがやりたいという想いを持つ人が集まらないといい国ができないということを就任演説でバン!と言ったわけですね。日本は最近になってまた「新しい公共」と言って、国民・市民が公共サービスにもっと自分から参画するように施策をはじめているわけですけど、まだまだ行政主導という感が否めません。

 

これは戦後の日本、特にバブル期についてしまった悪い癖が未だにそれを引きずっている。政府にたくさん税金が入り、何でもかんでもお金で解決する。政府は行政がまちづくり、公共サービスにおいてもお金を出してくれるという、悪い癖がついてしまったわけですね。その後遺症に私たちは悩んでいる。

 

もっと自分たちから市民目線で自分たちのやりたいことを考えた時、まちづくりのやり方があるでしょうし、行政にはできない市民だからこそできるサービスがどんどん生まれてくる。そんなことをケネディさんはずっと前から仰っていたわけですね。というわけで、ミッションの話から国づくりの話までに来てしまいましたけどもボランティアという言葉の解釈について話をさせていただきました。

 

「人」(顧客・スタッフ)について

~夢の国の創設者ディズニーが伝えること~

NPOの構成要素の一つである「人」というものを考えていきたいと思います。顧客であるとか、組織に関わっているスタッフ、会社でいう社員、職員、そういう人たちについて考えてみます。

 

また先人の言葉を借りるのですが、ウォルト・ディズニーの「裏舞台にある魔法は人、人こそ最大のアトラクション」です。ディズニーと言えばエンターテイメントの巨人ですよね。遊園地はもちろんですが、映像会社等、あらゆる人を喜ばせる世界で本当に大きな業績を残した方ですね。あるインタビューで「ディズニーランドはどんな魔法があるのですか?人を楽しませて、夢を与えて、喜ばせる。その秘密というのはどこにあるのですか。」と聞かれたときにこう答えているのですね。

 

「そのエンターテイメントの裏舞台にある魔法は何てことない、人なのですよ。」と。人が魅力的だから、サービスを提供する人が魅力的でなければアトラクションも魅力的にならない。裏で動いている人こそがアトラクションの最大の魔法であるということなのですね。

 

震災の後に東京ディズニーランドについても報道で非常に称賛を集めました。大きな地震があり、東日本大震災があり、その直後にディズニーランドのスタッフがどのように動いたか。マニュアルもあったでしょうが、一人一人の意識が高かったのだと思います。自分のすべきことを皆それぞれ、その場その場で判断し、第一にお客さんが安全で安心して過ごせるような場所に誘導し、毛布、売物の水や食料を配ったりして滞りなく進めていった。

 

またよく言われるのはディズニーランドの清掃スタッフ。掃除をしているのにあたかも一つのショーを見ているような作業であるという。オリエンタルランドの人材育成の素晴らしさが各界から称賛されているところですけど、その根本にある素養ではないかなと思います。創設者のディズニーさんが考えてグループをつくってこられたということなのです。というちょっと壮大な話からまた現実的に考えていきます。

 

2種類の「顧客」について

NPOには2種類のお客さんがいると言われます。2種類とお客さんと言ってピンときますでしょうか。会社のお客さんには、モノとかサービスとかを提供しますね。それを買う人がお客さんです。一対一の関係と単純に考える。行政のお客さんというのは税金をもらい、税金を元手に公共的なサービスを提供する。納税者と役所の関係です。同様に一対一で考えられる。NPOが特徴的なのは、2種類のお客さんがいるところにあります。

 

まず大事な第1の顧客は、受益者、NPOが活動することで利益を受ける人々、支援対象者のことです。分かりやすく言うと高齢者の福祉をミッションとしている団体ならばお年寄りの方ですね。NPOの活動をすることで助かる人たちです。難病の患者さんの支援というNPOであればその患者さんやその家族の方々、障害者の自立を支援しているところであれば障害を持っている方などが第一の顧客です。

 

これはミッションの直接対象となる人々と言い換えてもいいと思います。第1の顧客が必ずしも活動に必要となる資源を全部提供してくれるわけではないのですね。第2の顧客とは、その活動を成り立たせるために支援してくれたり、協力してくれたりする応援団を第2の顧客と呼んでいます。NPOの目的に賛同して活動を支援する人々、寄付してくる人々、助成してくれる団体、賛助会員等を第二の顧客と言います。もちろんどちらが大事かというと第1の顧客です。この人たちのために活動があるからです。この人たちのための活動があって、はじめて第2の顧客が得られるわけですし、第1の顧客ための活動がうまくいって、はじめて第2の顧客の獲得ができるということなるわけです。

 

しかし両方の顧客がいないと経営が成り立たない。そのような関係になるわけですね。どうでしょうか。「NPOは」ということを前提に話をしましたがこの考え方は企業や行政に当てはまりませんか?行政や企業は一対一の関係で、NPOは二種類のお客がはっきり分かれているということが特徴的で説明がしやすく分かりやすいです。どうでしょうか、別に行政でも、企業でもこのような考え方をしてもいいですよね。

 

誰のために自分たちは商品開発をしているのか。誰に喜んでもらいたいのか。この人が第1の顧客ですね。それを可能にするため色んな人たちのお手伝いが必要なわけです。より質のいい商品、より質のいいサービスを提供するため、お客さんに喜んでもらうためには第2の顧客的な存在というものが必ずどこかで関わるはずですね。こういう考え方をすることで、その企業の価値がもっと上がるのではないでしょうか。もっと行政サービスの価値が上がるのではないでしょうか。

 

最近私が気付いたのですが、企業とNPOは特徴が違いますと話をしてきたのですが、そうじゃないぞ、自分のなかでしっくりきていなかったのですね。「企業だっていい仕事しているところがあるじゃないか。」、「行政だってNPOよりよっぽどいい動きをしている職員たちがいるじゃないか。」と思った時に、どこを向いて仕事をしているのだろうかと考えた時に、この人たちの中で第1、第2の顧客がちゃんとあるのですね。他からお世話になっていい仕事ができている。特に協働なんて言葉がもてはやされますが、協働について考えるときに見えてきますね。ということでこれも必ずしもNPOだけに当てはまるものではない。この観点から組織の成り立ち、事業等をみていただけたらと思います。

 

NPOの運営資源について

第1の顧客、第2の顧客を分かりやすくする図なのですが、NPOの運営資源というものを表してみました。これも複雑に説明するとややこしいのでさらっと話をします。単純にパッとみて感じていただきたいのが、NPOというところに異様に複雑に矢印が出たり入ったりしていると思います。

 

行政はシンプルな捉え方をすると税金をもらって事業で返す。企業はサービスとか商品を買ってもらって消費活動でそれに対してものを提供する。「NPOの運営資源」というタイトルとなっているので社会貢献活動となっているのですが、企業と市民との関係でみるとサービスを提供して買ってもらうという関係になります。一対一で単純なのですが、NPOは色んなところから考えてみるとお金をもらったり、あるいはボランティアで労力を資源として提供してもらったりしているのですね。

 

色んなところから資源をもらいバランスをとりながら自分たちのミッションである顧客、第1の顧客が幸せになるために事業を展開する。そんな図になっているわけです。色んなところから資源をもらいながらやるというのが非常に重要でして、例えばよくあるのは行政からの働きかけで、市民参画とか市民主体のまちづくりをはじめることがたいへん多くなっているのですけど、市民や団体にNPOでもつくらないかという囁きが来るわけです。

 

行政の働きかけがきっかけで立ち上がるNPOが数多くあります。それが全てうまくいかないとは言いませんが、そのようなきっかけでつくられると進めていくとやらされ感が出てくるのですね。自分たちで徹底的に意見を出し、その中から出てきたミッションをもとに実践していないケースが多いので、そうなると非常に継続が難しくなります。そのようなNPOの内実をみるとほぼ100%行政からの委託事業や補助金で成り立っている場合が珍しくない。行政の仕事は、毎年同じ事業が永遠と続くわけではないですね。選挙結果で突然施策が変わったりすることも珍しいことではない。単年度を区切りとしているため来年度も同じ事業をするかというとその保証はない。

 

ミッションを達成するはずの集団が行政の都合でもって活動が立ち行かなくなるのは本末転倒である。企業でも同じことが言え、企業お抱えの外郭NPOが結構あります。一つの限られた企業からドンとお金を出してもらって運営資金としているNPOは、NPOの経営としては足腰が弱いですね。景気が悪くなると、企業がどこから削るかというと、NPO等の活動をはじめに削る。そうなるとミッションが達成できなくなる。色んなところから第2の顧客を複数もち、自分でもお金を稼ぎながらバランスよく運営していく。そういう意味で自立していることが大事です。

 

これについてもNPOだけに限った話ではないと思います。行政は分からないが企業も自分たちが本当に目指したい商品価値とかサービス価値を追求しはじめると、あちこちに左右される経営体はよろしくない。やはり同じように言えるのではないかと思います。

 

社会が悪い状態であるときにNPOが活躍するアメリカ社会

アメリカで私が勉強させてもらったときにうまく出来ていると思ったことがあります。どうしても社会というのは景気の波に左右されます。景気が悪くなると行政は税収が減ります。企業も似たようなところがあると思います。ものが売れない、サービスが売れないと非常に経営を圧迫する。やはり行政や企業が圧迫されると世の中の活力に関わる。

 

景気が悪くなると困る人がたくさん増えます。失業者が増えたり、自殺する方が増えたり、病気になってもなかなか治療するお金がない方が増えたりと困っている方が増えるのですが、そういう人たちを何とかしなくてはならないと人間は自然に思いますよね。アメリカがよく出来ているのはそういう人たちをケアしてくれるところに少しでも資源を向けようという力が働くことです。

 

景気が悪いと言ってもお金を持っている人は持っている。アメリカにおいてお金を持っている人はより熱心にNPOに寄付をするのですね。行政も大きな公共投資等、手がいかなくなるのですけど、福祉に関わる最低限の人々の幸せを守るための施策が増えたりしますので、そこを通してNPOに対してお金が流れこんだりする。景気が悪くなるとNPOにお金が流れ込む現象があり、社会が悪い状態にあるときにかえってNPOが活躍するという存在なのです。

 

NPOが活躍するとお金や人が動いたり、雇用が確保されたりしてそこで何とか社会が持ちこたえるのですね。公的なサービスを提供しつつ、持ちこたえて一番悪い時期を脱して、また景気が上っていくというサイクルになる。アメリカという国は競争社会ですし、貧しい人がたくさんいて困っていますし、バランスの悪い社会だなと思いながら勉強しに行ったのですが、世の中の仕組みをみるとNPOがうまくはまっているのですね。

 

日本はこれまで困った事態というのが戦後あまりなかったですね。戦後すぐの一時期を除いてなかったのではないかなと思います。未だかつて、今ほど色んな課題とか問題に溢れている時代はないのではないでしょうか。社会の構造をみていくと段々とアメリカ化している。そんな中で昔はこういうNPOみたいなものがなくてよかったと思います。

 

なぜかというと、NPOがなくてもそれなりに食べることができていて、幸せで余裕のある国だったからです。社会がこれだけ構造的にアメリカに似てくるとこういうものが必要になってくるのでしょうね。悪い時代に活躍してくるセクターの存在は、一時期になるのか、これから先ずっと必要となるのか分かりませんが、必要なものとして皆が応援しなくてはならないと思います。

 

あるところで意味のない競争に見切りをつける必要性を感じます。日本の会社は社員を大事にするのがすごくいいところだと思います。それが非常に怪しくなっている。そこにまた立ち返り会社がCSRという新しい言葉を使わなくても世の中のために、まちのために、活動するようになればNPOなんて育たなくて、いらないのかもしれないですね。私的に考えるのは、日本の企業とNPOは紙一重なところでどっちも成長してもいいのですが、組織経営というものを一緒に考えていかないと日本の社会は中々立ち直らないと思います。

 

顧客考

~人は人のために学び、人のために働く~

顧客について考えてみましたので紹介します。まず、「人は人のために学び、人のために働く」。これは私を市民活動の世界に引きずり込んだ大学時代の恩師である多賀先生という方の言葉です。早稲田大学の教授なのですけど、私は新潟大学なのですけど早稲田ではありません。新潟大学から先生が早稲田大学に行かれました。新潟大学に赴任していた頃に教えて下さった。

 

この反対は「自分のために学び、自分のために働く」になるのだと思いますが、人は努力したり、一生懸命勉強したり、一生懸命働いたりという行為というのは、どういうところからモチベーションになるのでしょうか。「自分のために」というのはきつくないですか。しかし、「自分が!自分が!」になりがちなのですが、人間は「自分が!自分が!」という気持ちを持ちながら勉強したり働いたりすると辛くなってくる。拠り所は自分の中にしかない状態です。人のためにと考えると逆に楽になるのですよ。

 

自分を中心に自分を高める、バランスよくスムーズにできる人というのは、お釈迦さまとか特別な力のある方だと思います。人のために支えられることで自分が育つ。その考え方が楽です。そのような本能を持っているということを先生は伝えられたのだと思います。あらゆる動物の中で人間だけですね。このように思って自分を高められるのは。自分以外のために働くと思えるのは人間だけだと思います。これはきっと本能だと思います。

 

~人を楽しませたい。そうすることで自分を認めることができる~

似たような言葉だと思いますが、「人を楽しませたい。そうすることで自分の存在を認めることができる」これは宮崎駿さんの言葉です。世界の宮崎駿、名作を数多く世に生みだしているすごい精神世界を持っている方だと思いますが、どうして精力的な仕事ができるかと言うと、やはり人を楽しませるという人のためという想いが中心にあるということです。

 

~「自分が」ではなく「相手に」認められる~

これもまた同じですね。誰しも認められたいというのが人の嵯峨だと思いますが、それも考え方ですよね。「自分が」認められたいと思うといつまでも満足しないわけです。思うようには誰も認めてくれないわけです。だけどもその起点を相手に向けると感じ方、考え方が変わってくる。相手に認めてもらえるための小さなステップを積み上げていくことが高めていく秘訣かなと思います。

 

相手目線で、相手が認めるのは相手なわけですね。価値観を相手におくか、自分におくかで健全性が変わってきますね。特にNPOをやっているとそう思いますね。あんまり自分の理念、理念と固執してしまうとくたびれて疲れてしまう。どんなにがんばっても人が認めてくれないというストレスばかりが溜まってくる。

 

だけども自分がうまく一つ何かできたときに周りの人が喜んでくれたということを糧にする。そのように考えることで、さらにモチベーションが上がると思いますし、なりたい自分に近づけるのではないかと思います。

 

~「きっかけ」「メリット」「やめない理由」~

「きっかけ」、「メリット」、「やめない理由」、これは何かというとネットワークの構成要素です。人のつながりですね。よくNPOの困っていることなんかを調査をしたり、聞いたりすると人が集まらないとか、担い手が育たないとか、活動が定着しないとか人に関する内容が断トツトップで出てきます。

 

そういう人たちが人を引きつけて、その共感を得るためにどんなことをしているかと聞くとできていないというのがネットワークの構成要素のマネジメントです。必ずその仲間に入るためには「きっかけ」があるはずです。誰しも最初は団体の抱えている理念にものすごく頭から賛同して入る人なんてそうそういないはずです。なんか簡単なきっかけがあり低い入口のすっと入るきっかけですね。そのきっかけをちゃんとつくっていますか。

 

入ってくれた人には、一緒に仲間になってよかったという何かがないとダメですよね。それが「メリット」ですね。仲間でいることのメリットを提供できていますか。何をメリットにしてつながっていますか。これは想いの世界ですよ。そこにお金が介在しても悪いことではないですよ。基本的にお金を介在したとしてもバックグラウンドには想いがあるというのがNPOの考え方ですね。何かしらのメリットが提供できているかどうか。

 

あともうひとつ、出口をちゃんと閉めているかどうか、「去る者は追わず」でいいのですが、せっかく仲間になってくれた人たちが続けていて、へそ曲げて「やめちまえ!」という瞬間があって辞めていくわけですね。その芽を摘んでいるかどうかは重要な要素である。心の面からネットワークをみると「きっかけ」「メリット」「やめない理由」の三つの理由、それぞれに作戦を持って考えられているかどうかだと思います。

 

~より重要なのは、ミッションとの符号~

そして最後、くどいかもしれませんが、顧客について考えるとさきほどの絵のように顧客のニーズはもちろん大事です。そこに応えるところにミッションが重なるのですが、ミッションはもっと先の自分たちの中にあるべきもので、自分たちの中にあって、そこから顧客のニーズを考える。その順番でやらないと疲れます。誰のためにやっているのだということになるのです。

 

共感形成の3つのステップ

~興味・関心の1段階~

「共感形成の3つのステップ」が共感を広めていく。共感のマネジメントですが、どうやって広めていくかを考えていきます。さきほども「きっかけ」と言いましたが、まずは、ちょっと興味とか関心があるだけという層の人がいると思いますが、その人たちに分かりやすく、親しみやすく、なおかつ具体的に「自分たちがこう動くことでこう変わるのです。」ということをものすごく分かりやすく、あと押しつけなく伝えることも大事ですね。我々の活動はいいに決まっているだろうという臭いをさせないこと。

 

~利用・協力の2段階~

それから一歩進んでいくと、その団体が提供している価値に賛同して積極的に利用してくれたり、協力の手を差し伸べてくれたり、そういう人たちに対しては、もっと一歩強い、自分たちの価値に軸を置いた響くメッセージ、「かっこいい」、「そうそうそれそれ」というメッセージが必要になってくるのだと思います。実際に自分たちが動いてどれだけの成果が出たかが伝わるアクション、どれだけの成果を残せたかということを伝えることによって、さきほど言ったメリットですね。目に見えて自分が仲間に入ったことでこういう成果が出たということを共有できる。そのようなアクションを伝えることが必要だと思います。

 

~協働の3段階~

もう一歩進むと仲間として、パートナーとして一緒に動くそういう段階に上がると思うのですが、そのような人たちに対して、目的よりももっと具体的な目標が必要です。「一年後にこうなっていましょう。」、「三年間でここまで達成しましょう。」という具合に目標を共有すること、その目標に向けての役割分担をしっかりとやる。しっかりと示すことでその人をお客にしないということですね。「自分も役立っている。」、「自分はこういう部分を担っている。」ということを意識してもらうのがこの段階で重要なポイントだと思います。

 

3つのステップを踏むことで、共感が高い所へ育っていくのだと思うのですが、それを横に串刺しにするのが、何といっても「理念」ですね。目的の達成というのが大きな理想像としてその先にあり、それに向かって興味関心の入りやすいところから協働等がっちりと一緒にやるところまで串刺しされているというのが共感形成の形であると考えています。

 

大学生が考えた「共感形成」(共感形成の3つのステップ具体例)

具体例なのですが、毎年大学の講義の中で取り上げているのですが、「興味・関心」から「利用・協力」、「協働」という3つのステップに分けて、「みなさんが世の中に広めていきたいことをどのように共感を広めていくかをデザインしなさい。」という演習で学生にやってもらいます。ある学生がつくったもので、面白く、よくできているものを今日紹介したいと思います。

 

その学生が理念として伝えたいこと。富山に来てこのテーマはちょっと挑戦的な感じがしますが、コシヒカリの故郷ですからね。すっかり新潟が頂戴していい思いをしているかもしれませんがお陰さまで日本一のコメどころなんてちょっと自惚れたことを考えているわけです。その女子大生も新潟の米は日本一だということを世の中にもっと広めたい、共感を広めたいということをテーマにして考え始めてくれました。

 

「興味・関心」がある比較的広い層に関しては、訴えかけとしては全国の消費者に対して、それを対象にしたい。キャッチコピーとしては、「あなたは、今食べているそのお米に満足していますか?」そのような呼びかけで訴えかける。アクションとしては、米-1(ベイワン)グランプリを新潟で開催する。普及啓発を促進していく。

 

一歩進むとどうするのか。対象は県内の消費者です。比較的近いところの人ですね。それから新潟米をおいしいと思ってくれる人ですね。これは県内外でもいいと思うのですが、新潟米の価値を見出している人たちに対して違う米の魅力で働きかける。「華麗なるお米族~パンに麺に大変身!」という感じです。米はこんな色んな事に役に立つのだという切り口から新しいファン層を拡大していく。アクションとしてはTVや新聞広告で広報してはどうか考えている。よく出来ているでしょう!

 

もう一歩進んで、「協働」の部分になってくると、対象は同じ思いの農家や食品関係の人々になります。キャッチコピーは、「米は永遠に日本の主食だ」です。ジーンとくるものを持ってくる。米に対する愛情をかきたてることを前面に掲げて、やることが憎いですが、新潟の食材でご飯に合うおかずを開発する。ご飯に合うおかずを開発することでご飯の価値も高まりますよね。新潟産の食材を使うことで新潟の米というストーリにもつながりますし、お米農家以外の食品業界を巻き込む、協働にからめる。というすごい学生で、卒業したらNPO協会に入ってくれないかなと思ったりしました。例えばこんな感じで共感を広げて行くという話でした。

 

組織の形について

もう一つ話をしておきたいのが、組織の形についてですね。スタッフの皆さん、職員の皆さんの話になるのですけど、大体組織というとどのような形を思い浮かべるかというとこのようなピラミッド型を思い浮かべますよね。これも大学の授業でやるのですが、最初に何も言わないで、組織を図に描いて下さいというと10中9人がピラミッド型のものを描きます。

 

学生たちに、「卒業したら皆さんもこの中に入るのですよ。」と言っています。「どこからスタートするか分かりますか。一番下の一番端っこのここからスタートするのですよ。」と話します。「どういう状況か考えてみて下さい。常に上司からは遅いとか、要領が悪いとか、態度が悪いとかそういうプレッシャーを受け続けて、たまにうまくいって成功したと思ったらその成功を上司が自分のものにして上に報告したりする。そういう世界に突入していくのだよ~。」とそんな簡単な脅しをするのですね。ピラミッド型の組織を捉えるとそういう力が働きやすいと言えるのではないかと思います。

 

上位下達。下からはあまりいいものは上がっていかない。上の論理でもってすべて進んでしまう。そうしたときにみなさんハッピーですかというとみんなハッピーとは言いません。そこでまたもう一つ別のお題を出すのです。「その組織に属する人がみんなハッピーでいられる、それぞれのいいところを思い活かしあえるような組織を図にして下さい。」というと違った色んな形が出てくるのですね。それは10人いれば10通の描き方をします。

 

割と多いのがこのタイプです。私たちの出しているまちづくりのテキストの図をそのまま持ってきたのですが、ネットワーク型の組織です。真ん中にコーディネーターがいるのですね。上司ではなく、コーディネーターです。周りの人たちのいいところ、持つ情報、得意なもの、個性を引き出して組織全体の仲介役になる。適材適所を図り、個性を活かすための存在です。会社等での課長や部長がこの役割を果たすとすごくいいと思います。決してただ偉いわけじゃない。コーディネーターを核としたネットワーク型組織というのが実際はNPOでこのようになっているのだと思います。ボランティアコーディネーターもこのような図になりますね。こういう形が人を活かすものになるのかなと思います。

 

組織考について

~仕事を楽しくするのは共感力~

仕事を皆さん楽しんでやっていますか?楽しむ秘訣がないかなって考えたのですが、それは共感することだと思います。仕事の中で色んな人たちとコミュニケーションをとる、組織内外でコミュニケーションをとると思いますが、ただ単純に用件だけを伝えるだけでなく、自分がどう感じているか一緒に伝えるとか、どうしてそれを伝えたいのかということを伝えると共感力は高まります。

 

言ってみればお互いがわくわくする気持ちを通じ合わせること、それが器用な事務局がいるとすごく動きがいいですね。まさしくコーディネーターの資質の中心的なものだと思います。共感する力がズレてくると組織というのは非常に風通しが悪くなるし、つまらないものになると思います。

 

やる気の三要素:前進・方向性・参加

よくこれも聞かれるのですが、「スタッフがなかなか本気になってくれない。」、「やる気になってくれない。」と言われますが、組織を経営しているあなたはこういうものを提供していますか。みんなで動いていることによって、目的に向かい前進していますか。前進していてもその前進している成果を共有できていますか。どちらに向かい前進しているかを共有できていますか。

 

もちろんミッションからはじめるのですけど、ミッションはある程度抽象的なものですから、それよりももう一段階具体的なビジョンが必要です。3年ビジョン、5年ビジョン、10年ビジョン等で方向性を共有できているか。ちゃんと参加を保障していますか。

 

よくNPOが陥りがちなのが、「参加してもらって本当にありがたい!」はいいのですが、申し訳ないみたいになってきてしまうのですね。参加する人たちをお客さんにしてしまうのですね。「ようこそありがとう。また来てくださいね。」というのはいいですけどそうじゃない。やりたいからやるというのがNPOの鉄則ですから、さきほどの共感形成の3つのステップのどこの状態であっても同じだと思うのですね。

 

やる気があってちょっとでも顔を出してくれる人をお客さんにしてはいけない。みんなを主役にしてあげないといけない。その人の力を活かすこと、そういう役割を与えることができていますか。前進・方向性・参加というのは、やる気の三要素ということです。

 

~やりたい気持ちに主客はない~

これもNPOも会社もそうかもしれません。悩みの王道なのですが、「活動の継承者がなかなか現れない。生まれない。」ということです。そういう人たちがどういうところで、誤解をしているかというと、「せっかくここまで組み立てたいい活動、成長した組織を受け継がないというのはなんてバカなのだ。お前たちは!」と思ってしまうのですね。これもある意味で受け継ぐべき人たちをよそ者として扱っている。やりたくて集まっているその人たちのやる気でもって受け継がせないといけない。その人たちなりのやり方もあるでしょうからそれを見い出しつつ、組織経営者は、築いてきたものをどうやってうまく使ってくれるかに骨を折ればいいわけです。

 

~受け継ぐとは、次の人が新しくやりたいと思うこと~

受け継ぐということはこれまでの実績や業績を押しつけるのではなく、次の人が新しくやりたいことをさせること、やりたいと思わせることです。その人たちの気持ちにストップをかけしまうと受け継ぐことができなくなる。それが組織の新陳代謝です。でも理念とかビジョンが共有されていれば、反れることはないのです。それがあってのこの言葉です。

 

~人は自ら動く者のために動く~

これも私の恩師から言われたことなのですが日々実感します。色んな団体の代表をやって、スタッフ等に「やりたいようにやって。」と言っているのですけど、中々やらないですね。自分もアクセクしないといけないのです。自分のやり方を押しつけるわけではないのですが、おれも本気になってやっているというところを見せないと誰もついて来ないですね。「新しくやりたい!」と次の人たちが思うまでには、魅力的にいきいき楽しんでいる今のボスがいるのですね。その人がいるから自分も育とうと思って、次にその組織を自分なりにやってみようとはじめて思ってくれる。自分もアクセクと汗を流して、飛び回る。

 

私は、「仕事」とひとくくりに言いますが、半分以上が無報酬のボランティアです。同じことをやっているのだけどお金をもらったり、もらわなかったりします。必ず何かに役立つと思って手は抜きたくないですね。お金をもらう、もらわないに関わらず。自分のやりたいことをバカになってやって、辛うじてつなげとめられているところがあると思います。自ら動かないと他の人はよそに行きますね。他を見てしまいます。

 

~コラボレーションは役割分担~

一緒にやると考えた時に、コラボレーションとよくいいますが、単に一緒にやるだけじゃなくて、役割分担がきちっとされているかの話ですね。組織の中でのコラボレーションもそうですが、行政とNPO、企業とNPO、企業と行政とみてもそうですね。非常に危ういのがNPOと行政のコラボレーションで、行政って何でもやってしまうのですね。日本の行政は仕事をしすぎるのですね。

 

これもバブルのツケなのですね。市民がやる前に何でもやってしまうのですね。主導的な立場をとってしまうのです。まだ市民がそこまで成熟していないからというのもあるかもしれませんが、NPOと行政がやるときも立場的に行政が上に来てしまうということが多々ありまして、そこのところの役割分担を認識しておかないといけない。市民が本来やるべき作業があり、そこは市民に育ってもらう前提で協働するという姿勢で随分関係性が違います。そこの役割分担を認識した上で協働してもらいたいと思います。

 

市民組織への25の質問

ここからは皆さんにも一緒になって考えていただきたいと思います。お配りした「市民組織への25の質問」と書かれた用紙があります。これは私がこれまで色々と勉強させてもらい、市民組織、NPOへの支援をさせていただきましたので、「市民組織への」というタイトルとしていますがコンセプトはこういうことです。

 

「活動の背景にある思いを大切にし、生かすこと」、ミッションですね。「活動に集まるを大切にし、生かすこと」「抑え合うのではなく、高め合う仕組みがあること」、この3つのコンセプトをもとに、25の質問にまとめたものです。新潟県内で、組織運営に関わるコンサルティングをNPOにする際、一旦このアンケートを先に答えてもらい、どの部分が今出来ているか、どの部分が弱いかを見た上で、本当の課題がどこにあるかを嗅ぎ取るために使っています。講座の中で利用したりもします。

 

組織運営に必要な4つの力

この25の質問には構成がありまして、組織運営に必要な4つの力、4つに分けて考えています。一つ目が「理念志向力」。その団体の掲げる理念に向けて顧客をきちんと把握していて、それに応える事業を展開出来ているかどうか。それを問う質問が最初の10項目です。次の5項目というのが「共感形成力」。その思いを核に共感を広げる力がその組織にあるかどうかをお伺いしている。三つ目の5項目というのが「自己変革力」。新陳代謝ですね。組織として新陳代謝できる仕組みが備わっているかどうか。最後の5項目が「意思決定力」。非常にNPOは危ういところがありまして、ともするとみんなでやることを第一にするあまりいつまで経っても決まらないとか、いつまで経っても動かないということになりがちですね。その中でタイムリーに物事を決め、判断して動く、柔軟性や迅速性というのがNPOの民間組織であるメリットだと思います。みんなでやるという一言で鈍ってしまうことがあるので、そうならないように、重要な質問を5つ挙げました。

 

実際にこれから11個私がお尋ねしていきますので、自分が所属している組織、自分が一番把握している内実が分かる組織を思い浮かべていただければいいと思います。行政職員の場合は自分のいる課くらいの単位がいいでしょうかね。自分のイメージしやすい組織でOKです。大きい会社の場合はご自分のチームとかセクションとか、NPOに関係する方はその組織で思い描いて下さい。一個一個質問しますので、それについての皆さん自身の満足でもって1~4の数字に○をつけていただきたいです。4が一番高い満足度、全然だめだと思ったら0です。普通という選択肢はありません。良いか、悪いかになっています。1、2が悪い方で3、4がいい方ですね。

 

まず理念と顧客について質問です。直観的に答えるといいですよ。

1.組織の理念は明確であり、構成員間で共有されている
2.だれのための活動で、何が求められているかが明確である(第一の顧客の話)

3.活動を進める上で、だれのどんな協力が必要か明確である(第二の顧客の話)

4.上記(2)(3)の相手と十分なつながりがある。(情報交換や信頼関係など)

5.組織の理念は時代の変化や社会の現状に即したものである(時代とのマッチ)

次に理念に向けた事業についての質問です。

6.現在行っている事業は理念を実現する上で適切なものである

7.事業の成果目標がスタッフ・役員で共有されている(理念に至るまでの設計図)

8.活動に関する中~長期的なビジョンがある(設計図がそもそもあるか)

9.事業を遂行するために必要な人材は確保できている

10.事業を遂行するために必要な資金は確保できている(長期的に考える)

次に共感形成力についてです。組織(共感形成)

11.情報の共有と発信のしくみが整備され、機能している(機能しているか)

12.建設的な会議ができている(新しい価値が生まれているか)

13.各事業の担当者が孤立せず、互いに協力し合っている

14.成功を評価し、次の成功を誘発している(プラスの連鎖)

15.通常業務の他にも活性化を促すコミュニケーションがある(これが意外と大事)

自己変革力に関する質問についていきます。組織(自己変革)

16.新しい提案がしやすく、実行に移しやすい

17.失敗やクレームが業務改善に生かしている(批判を受け止め改善に役立てる)

18.定期的に活動をふりかえり、課題が明確になっている(課題なく目標定められない)

19.組織・財務・事業に関する情報が開示されている

(情報公開・経営が判断できる資料。事業計画・報告、財務諸表、予算結果等。情報を開示しないと入ってこない)

20.次世代の人材発掘・育成を積極的に進めている

残り五つです。組織(意思決定)

21.意思決定は速やかに行われている(意思決定のスピード。タイムリーな意思決定)

22.意思決定が一部の人間に集中していない(独占状態になっていないか)

23.意思決定に必要な情報が十分にある(意思決定にする上で必要な情報が集まるか)

24.意思決定における役割分担が明確で、尊重されている

(船頭が多くて難儀していないか。役割分担に基づき意見が尊重されているか。)

25.意思決定のミスをフォローできる体制がある

(失敗はその人のせいではない。組織がフォローして吸収することが大切。改善して成功につなげる。)

 

どうですか。できましたならば、小計を出していただけると助かります。1から10、11から15、16から20、20から25までで小計を出して下さい。計算していただいている途中ですが、この質問をしている背景を別紙にまとめています。25の質問と想定される課題を示しています。自分が○をつけて点数が低かったものに目を通していただき、陰にはこういう課題があるのではないかということです。これだけが全てではありませんが、簡単にまとめたものです。皆さんいかがでしたでしょうか。

 

面白いことに、コンサルティングするときに組織に回答をお願いするのですが、3人に書いてもらいます。代表の人、現場の責任者(NPOなら事務局長、施設長)、若手の中堅スタッフです。お互い結果を伏せてもらい出してもらうのですが、全然違うのですね。意識のギャップを見ることができます。

 

一番厳しく点数をつけるのが現場の責任者です。事務局長とかです。一番何に困っているかを日々実感しているのでしょうね。一番甘い点数をつけるのが代表者です。理事長さん、会長さんとか社長さんですね。よかったら皆さん色んなところで使ってみて下さい。ということで残り15分ほどは、質問タイムということでどうぞ、ぜひお願いします。

 

<質疑応答>

Q1.具体的な実践の話がなかったと思いますが、実際の話を聞かせていただきたいです。

A1.たくさんあります。どんな切り口からお話したらよいかというのがあるのですが。

Q1.それならば点数をつけていて一番厳しい結果となったのが資金的な問題ですね。事業に生かすための資金の集め方、組織を維持するための資金繰り、代表はボランティアでいいですけど、実務をやる人は定期的な給料が必要ですので工面の仕方という組織づくりの問題を聞きたいです。

A1.ぜひ個別のテーマについても今後お招きいただけたら幸いです。資金面でみるとGPネットワークさんがとても素晴らしくやっていると思います。大懸さんから先ほどどのようにやっているのかを聞いていたのですが、主には会費とこのセミナーチケット収入で、専従スタッフも置いている。すごいですね。

Q1.今年はいいが来年が問題である。

A1.資金繰りの手段についてバランスがとれている。会費の収入は極端に年によって上下しない。自主事業でチケットを売り上げて、それを収入としているわけですからある程度、来年も予測しやすい。そこで得た収入は自分たちの思うように使える。そうではないNPOは委託だけで食べている。補助金をつなぎ食べているNPOは、毎年同じお金が入ってくる保障がない。行政が方針を変えてしまうと終わってしまう。そういうNPOもたくさんある中で、自主事業の収入、会費収入をしっかり基盤ともっていて、専従スタッフも雇っていて、お手伝いする人にもちょっとした手当も出るというバランスのとれた形でやっていると思いました。

 

一番強いのは寄付金と会費収入をしっかりとさせることですね。そこで基盤をある程度しっかりとつくる。あとプラスアルファでコミュニティビジネスを展開できる団体であれば自主事業をするのが次のおすすめです。新しいことをはじめたい、新規事業を立ち上げたいときに助成金や補助金をその都度、明確な目的でとってくるというのが一番よいのではないかと思います。

 

行政と一緒にやるときはよっぽど自分たちでやりたいことが一致したときですね。組むことでお互いにメリットがあるときに仕事を受ける。下請じゃないぞということですね。対等な立場でパートナーとしてやるという土俵で物事が考えられたときにそういう関係が成り立つと思います。

 

私のやっている団体はいろんなタイプの団体があります。完全に無償ボランティアで、みんな手弁当でできる範囲で上手に組み合わせ、寄付金や会費を中心にやっているところもある。NPO協会は9人ほどスタッフがいるのですが、主体にやっているものは委託事業です。ただし委託事業の中身はこちらから提案したものばかりです。基本的に国に対してもこちらから提案してとってきているものですので、上から降ってきたものを受けることはない。その団体にあったやり方でしょうか。大事なのはそこで何をしたいのかということ、組むべき相手は誰なのか。というところでしっかりと話し合って、事業計画だけでなく、資金計画についてもしっかりと組織内で議論することが大切です。

 

Q2.このセミナーは、会費をいただいて運営していまして、富山では珍しく有料で会費をいただいてやるセミナーです。有料にしてから参加者が真剣になり、参加者数が増えました。以前は、行政が開催していて無料でやっていたのですが、行政がやめると聞いてせっかく続けてきたものをやめるのは残念なので行政の支援を受けないでやることにしました。

 

今日も参加をいただいていますが、この会場の富山国際会議場から会場費を上回るような多大なご支援をいただいております。会場費は払っているのですが、一方で会場費を上回るご支援をいただいているので成り立っているというところがあります。多分それがなくなったりすると参加費用の負担を見直す必要が出てくるのではないかと思っているがそれでも続けていきたいと思っています。

 

それから専従スタッフを雇っていますが、提案型事業を国の予算をいただいてやっており、その中で専従のスタッフを雇っている状況です。さきほど先生にお話いただいた内容と変わらない、非常に不安定な状況であるというのはその通りです。

 

事業を多く取り組んでいますが、名前がGPネットワークと言っていますように今日のお話がありましたピラミッド型ではなくネットワーク型の組織でやろうということで色んな事業にそれぞれ責任者、担当者がいて、やりながらゆるやかにつながってお互いに協力していきたいという思いでつくっている組織です。

 

今年いる専従スタッフ一人を除いて、基本的には皆どこかの組織に所属している会社員だったり、公務員だったり、いわゆるサラリーマンとして通常働いています。ほとんどピラミッド社会の中で仕事をしていますから、それがネットワーク型の組織になるとうまく気持ちの切り替えができないのですね。誰かに言われて動くということならできるのだけど、自分たちで中心になってコーディネートしながらうまくそれぞれの個性を活かして色んなことをやっていく切り替えがなかなか難しいだろうなという思いがあります。その辺は先生がやっているNPOでは全員が専従のスタッフではなくていろんな人が関わっていると思うのですが、その辺は、どううまくコントロールされているかを教えて下さい。

 

A2.私は幸い、周りにいる人たちが熱すぎるくらいの人たちが多く、あんまり動かなくて困るということがなく、一番動かなくて困るのはNPO協会のスタッフでしょうかね。(笑)袖から募集して入り、それでも並の組織より動きがいい方だとは思うのですが…。もうちょっと慎重に考えてから動けよと言いたいぐらいに動いてしまう人がまわりにたくさんいるので、私自身はそういう悩みがないのですけど、コーディネーターというのは大事だと話しましたけど、新潟というところは、コーディネーターの養成というのをものすごく力を入れてやっています。

 

15年くらい前から新潟県が主催でコーディネーター養成講座を実施しています。講座の中身を用意するのが私たち市民団体なのですが色んなところで勉強してテキストもまとめ上げて、今日そのテキストを持ってくるのを忘れてきたのですが、マチダスというテキストがあって新潟からも取り寄せることができます。まちづくり学校で検索いただけると出てきます。18期になります。毎年1回か2回ずつ1泊2日を三回くらいの6日間連続のカリキュラムです。

 

そこに来る人たちは、市民団体に所属する人、商店街の人たちだったりしますが、半分近くが行政の方なのですね。卒業生が500人以上いるのですけど、県内どこの行政の窓口、どこの課に行っても大体話が分かる人がいるという状況になっています。信頼関係があります。「養成講座の卒業生だよね。」というだけである程度つながるものがある。協働というものに対する同じような認識を持っていたり、まちづくりの原則をお互いに分かちあったりする。何かを確認しなくても共有できるものがある。そういうものに助けられているというのがあるのではないかと思います。

 

それもお金をかけてやっていないですけど、予算的には多分このセミナーと同じような感じではないでしょうか。まちづくり学校のスタッフはそれに関して完全にボランティアでやっています。宿泊費とか交通費とか、外から呼ぶ講師とかの必要な経費だけはそこから出しています。これは絶対に無くしてはならないつもりです。実は県がその事業をやめたのですが、今度は自主事業で参加費をもらいやろうじゃないかと切り替える予定です。コーディネーターなのでしょうね。育てること。

 

Q3.非常に興味深く、お話を聞かせていただきました。私は一般の企業でコンサルタントをやっているのですが、一般企業でこれだけ収益性が低い中、経営者が心折れないためにも、従業員のモチベーションをもってもらうためにも、人であったりミッションであったりということ、私も言っているのですが、今日のこのアンケートは非常に一般企業でも使える有益なことが多く勉強させていただきました。ありがとうございます。改めてお聞きしますが、お聞きしたいのはまちづくり活動をされている中で、一般の企業の方と接することも多いと思うのですが、やっぱりNPOだからできること、NPOにしかできないこと、もしくはNPOはこんなところが面白いのだということを改めて教えていただきたいです。

 

A3.NPOのメリットは確かにありますね。NPOというだけで、みんなが何か世の中に良いことしようという前提があるだろうと思ってくれる。企業と実は変わらないのですけどね。NPOを名乗っているだけで最初からそう思ってみてくれる。デメリットは、「あんたらボランティアなのでしょ。」と言われることですね。お金のやりとりに関わる話になると、「NPOなのにお金をとるのか!」と言われる。メリットがあります。何と言っても寄付金を集めたり、ボランティアを集めたりしやすいということが最大のメリットですね。寄付金が集めやすいのですが、集め方を知らないNPOが多いですね。一生懸命そういうところを何とか伸ばそうと思っています。もったいないですね。せっかくNPOという看板を掲げているのにもったいないなと思います。寄付金もボランティアを集めない。そこをきちっとマネジメントできるようになると面白い商売だと思いますね。

 

可能性は無限だと思います。NPOの特長を取り入れてやっている企業もあります。新潟で親しくさせてもらっている企業ですが、子育てを応援する、「全ての子どもに笑顔を」というミッションで、マーケティングをやっている会社です。まちのなかのお店とか会社とかで、子育てに配慮しているサービスや特典などを持っているところから広告をもらってその情報を共有するという形で事業を成り立たせています。その情報が欲しいので8万世帯会員がいる状態です。企業がやっている非営利目的の事業の応援団です。その企業に現在お願いしているのが、私のやっている新潟国際ボランティアセンターにおけるベトナムに学校をつくるプロジェクトで、資金を寄付金で集めるため、「会員さんに呼び掛けて集めてくれませんか。」とお願いし、会報で広告の面を使ってもらい無料で掲載して、それを8万世帯に撒いてくれるわけですね。

 

そのような形でお付き合いさせてもらっている企業もありますので、本当にNPOだから、企業だからなんだということは実はないのだというのが、今日の話の続きになるのではないかと思います。

 

Q4.楽しいお話ありがとうございました。今までNPOのマネジメントに関わるお話を聞いて、金子さん自身が何個かNPOをやっていると聞いていたのですが、NPOの大切な想いということで、金子さんが世の中をどうにかしたいという想いというのは、どういう想いなのかを教えていただきたいです。

 

A4.最後に核心的な質問ですね。(笑)あなたのその想いは何なのだという話ですね。色んなことに首を突っ込んで何を思ってやっているんだという質問ですね。最近になって気付いたようなお恥ずかしい状態ですが、思い出せば昔から言っていたなと思うのですが、「人が生きる、人が生きられる社会をつくる。」ということですね。人は全てボランティアであれ。きちんと説得力を持って響くような、そんな社会と自分の実践を作り上げていくというのが目的です。ちょっとかっこ良すぎましたかね~。(笑)いい質問を最後にありがとうございました。

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