レポート

まちづくりセミナー2010

まちづくりセミナー第三回講演録 講師:中井精也氏

2011/05/22 

素敵な列車の走るまち

講師:中井精也氏 (鉄道写真家)

1967年東京生まれ。
成蹊大学法学部卒業後、写真専門学校を経て、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。
独立後、2000年に有限会社レイルマンフォトオフィス設立。
2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄」を連載中。広告、雑誌写真撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。
著書、写真集に「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」、「ゆる鉄」、
「中井精也の鉄道スナップ撮影術 ゆる鉄」などがある。



第3回 平成23年1月29日 富山国際会議場会議室
「素敵な列車の走るまち」

 

[はじめに]


 



・2時間という時間をいただいたので、鉄道写真を紹介しながらお話をさせていただきたい。

・最近富山には縁があり、先週1月17日~19日にかけて富山地方鉄道にテレビロケで来ていた。
2月2日(水)19:00からBS-TBSで1時間まるごと富山地鉄という無茶な番組を放送するのでぜひ見ていただければと思う。
ロケ場所を自分で決められる中でなぜ最終回に富山を選んだかというと、富山地鉄の駅が大好きだから。
富山が大好きだし、今回このような形で皆さんに会えるのを楽しみにしていた。

・まちづくりセミナーということだが、見てのとおり専門家でも学者でもない。
ただ、日本の鉄道をずっと追う中で、色々な人が暮らすまち、それを取り巻く自然を、
鉄道という目線からではあるが、学者さんよりもたくさん見ているかもしれない。
全国に見つけた鉄道と人が交わる素敵な風景を写真でたくさんお見せしたいと思う。

・講演後には「日本って捨てたもんじゃないな」というか
「日本っていいなぁ」って思ってもらって、
ぜひ明日にでも富山地鉄に乗って旅に出てみよう!という雰囲気になってもらえればと思う。

・スクリーンに表示されるものを撮影して参考にしてもらってもかまわない。
僕の顔にも著作権はないので、ブログにあげてもUstreamで中継してもらってもかまわない(笑)。


[自己紹介]


・そもそも鉄道写真家たるものが商売になるのか?
もしかしたらあまりなってないのかもしれないが、今日のように色々なところで講演をしたり、
JR時刻表や雑誌の写真掲載などで生活を成り立たせている。
ちなみに時刻表の表紙はコンテストなので運で決まる。

・メインの活動はブログ「一日一鉄!」である。
http://railman.cocolog-nifty.com/
2004年の春から7年も毎日毎日電車の写真を撮って公開している。
どんだけ電車好きやねん、って感じだが、本当に毎日続けている。

・鉄道の写真といっても、編成写真やSLといった一般的に想像するような鉄道写真ではなく、
車両だけじゃなく鉄道にかかわるすべてのモノを被写体として撮影している。

・見た目からはわからないかもしれないが、甘党なことは重要なので覚えておいてほしい。(会場爆笑)

 

[津和野]


・鉄道ファンだと車両をアップで撮影してしまいがちだが、
周辺の街並みや自然を入れることによって鉄道がもっと生き生きとするのではないかと考えている。
写真の中に人や車が写っているが、これはこれでリアルな風景でいいと思っている。

・津和野のまちはすごい、いつまで経っても変わらない、それが素晴らしい。
あれだけ大きな町なのにコンビニがない。
ジャンクフードが好きなので撮影ロケには非常に困るわけだが(笑)。
そういった姿勢が、素敵なまちなみが残る要因の一つだろうと考えている。

 

[釧網本線]


・今度の写真は釧路湿原の中、まったくまちが写っていない。
何もないところを走っている。
でも、やっぱりこの鉄道も人が人を運ぶために走っていて、僕はそこに浪漫を感じてしまう。

(中略)

 

[富良野線]


・僕は見た目はおっさんだがかなりのロマンチストである。
銀河のように見えるこの写真は降ってる雪に向かってフラッシュをあてて、
その瞬間だけ銀河のように写し止めたもの。
意外に簡単に撮れるので帰りに富山地鉄ででも試してみてほしい(笑)。
ただし、電車に向けてフラッシュを焚くと運行上危ないので、必ず上に向けて撮ってほしい。

 

[札幌駅の展望台からの夜景]


・ローカル線や田舎も素晴らしいが、都市の写真ももちろん撮影する。
プロになったばかりの頃は、どうしても綺麗な風景ばかりを狙っていて、
都会なんて絵にならないと考えていた。
けれど、このライトのひとつひとつに人の暮らしがあると思った時から浪漫を感じるようになり、都市も撮るようになった。

(中略)

 

[いすみ鉄道・第二五之町踏切]


・ついに列車も線路も写っていない。
写っているのは踏切だけ、しかも裏側。
だけど、こう今にもローカル線が走ってきそうな、そんな雰囲気を感じてもらえるかと思う。
この日は雲の流れが良く、また、飛行機雲が出たりして一日中ボーっと踏切にいた。
とても社会人とは思えない(笑)。

・鉄道写真でも飛行機写真でもそうだが、
対象そのものだけじゃなく周辺も含めた広い視点で見るとまた楽しみが広がる。

 

[新神戸駅]


・女性の駅員さんのピンと張った指先、
何度も何度も確認しなくていいのにと思うくらい確認する。
そういった一つ一つの繰り返しが新幹線の安全を作っているのかなと思う。
鉄道は硬い無機質なものだが、人が動かして人を乗せていくもの。
やはり人がキーワードになるんじゃないかと思っている。


[富良野線]


・僕は自分の子供を使って鉄道写真を撮る。
富良野といえば北の国から、北の国からといえばジュンと蛍と思い、
ジャージを探し回ってジャージを着せて、踏切を何往復もさせた(笑)。
写真では笑ってるけど子供はぶちキレている(笑)。
こういうのをヤラセだという人もいるが、見た人がホッとした気持ちになってくれればいいので、柔軟に写真を撮っている。

 

[車両を持ち上げるクレーンと指を重ねた写真]


・自分の手とクレーンを重ね、まるで自分の手で持ち上げたように撮影した。
柔軟すぎるだろ、という感じ。
広角レンズを使って絞り優先モードで最大まで絞ると、
全体にピントが合うので遠近感の失われた写真が撮れる。
結構使えるのでぜひやってみてほしい。


[子供がペットボトルの中に閉じ込められているような写真]


・同じように小物と人物をからめて撮影した。
子供がいる人はぜひやってみてほしい。暑中見舞いなんかに使うとウケが良い。

 

[田んぼの中を走る列車]


・鉄道は旅情というか、“何か”を持っていると思う。
例えば、田んぼの中にタンクローリーが走っていても何も思わないけど、
鉄道だと何か旅情を感じてしまう。
もっといえば、ここに舗装道路やガードレールがあったとしたら
「あぁ、邪魔だなぁ」と思って被写体にいれないように写真を撮るんじゃないだろうか。
だけど、ここに線路が延びていたとしたら「スタンドバイミー」みたいだなと思って撮りたくならないだろうか?

・道路もガードレールも線路も同じ人工物。
でもその差はなんなんだろうと考えた時、旅情を持っているか持っていないかの差なのだと思っている。
おそらくみなさんのDNAレベルで旅情を感じるようにインプットされているのではないか(笑)。
例えばアメリカ人はルート66のようなどこまでも続く舗装道路を見て浪漫を感じるかもしれない。
ただ、日本人はやはり線路を見て何かを感じるのではないだろうか。

・特に富山はこの時代に私鉄がこれだけの路線を持っていて、
皆はそれが普通だと思っているかもしれないが、全然こんな都市はない。
しかも路面電車なんて日本中どこでも廃止になっているのに、逆に増やしているなんておかしい(笑)。
それだけ鉄道が素晴らしい県であることをもう一度確認してもらいたい。
そして、今日の会を通して鉄道の旅情を皆さんとともに感じていけたらと思う。

 

[ゆる鉄]


・僕の写真のシリーズのひとつに「ゆる鉄」というのをやっている。
これはゆるい品質の写真というわけではなく、
ローカル線に乗った時に「ゆるいあなぁ」「のんびりしてるなぁ」と感じるようなものを被写体にしている。

・電車も線路も写っていない。
おじさんが写っているだけの写真だが、これだけで路線の雰囲気が伝わってくるのではないかと思う。
ゆる鉄は真四角にトリミングした写真にしている。
写真展で縦横のものが混じって段差が出来るのが嫌なので。

・「こんな写真を撮ったんだすごいだろう!」というのではなく、
懐かしかったり、ほっこりまったりのんびりしてほしいと思っている。
写真の形にもこだわって、頑張ってゆるくしている。

・ローカル線と聞いて浮かんでくるイメージ、
そのイメージを現代の日本の鉄道で見つけ出して写真にしたいと思っている。
「日本の」というのが重要で、中国とかベトナムとか行くと全部ゆる鉄なのでおもしろくない(笑)。
この近代化された日本の中で、宝物のようなゆるい懐かしい風景を探していく、
それがゆる鉄の一番の楽しみ。

・何が起こるかわからない鉄道での出会いを撮っているのである意味スナップ写真とも言うことができる。

・スナップ写真は狙って撮れるものじゃないのでおもしろい。
何でも気負って撮影するだけではだめなんだと最近は思っている。
どこにおもしろい被写体があるかわからないので、見つけたらすぐ撮るようにしている。


[ほのか旅]


・ゆる鉄に続くもう一つのシリーズで、記憶の中の心象風景のような色合いで撮ったもの。
鉄道写真といっても色々な切り取り方がある。

 

[上毛電鉄]


・上毛鉄道で車内に桜を飾っている写真。
お金をかけているわけではないが、人をもてなそうという気持ちが伝わってくるので、
こちらとしてもできるだけ綺麗に撮影したくなる。
1時間くらい色々な構図で撮影をしていた。

 

[越美北線]


・これも線路しか映っていない。
小さな駅で降りた高校生が帰っていく風景。
僕はここで生まれたわけじゃないのだけれど、まるで昔ここに居たかのような、
デジャヴュのような鉄道風景を撮りたいと思っている。
絶景じゃない、どこにでもある風景なんだけど、ありのままのまちのよさを表現したい。

 

[いすみ鉄道]


・いすみ鉄道は富山地鉄よりも田舎を走っている。
こどもたちが乗車運動というので乗っている時に撮影したもの。
乗る用事があるわけではないのだが、少しでも鉄道にお金を落とそうということと、
田舎とはいえ車社会なので公共の場でのマナーを知らない子が多く、
情操教育も兼ねて乗車運動をしている。
いすみ鉄道がしてくださいと言っているわけではなく、
みんなで力を合わせて線路を残そうとしてやっている。

・「次の駅の先にひなのちゃんのおばあちゃんがオレンジ色の風船を持って立っています」なんてアナウンスが流れて、
みんなでワァーっと手をふったりする。
いい思い出になると思うし、鉄道も元気になるし、
子供たちのためにもなるし、ぜひ全国でもやってほしいと思っている。

・いすみ鉄道は富山ライトレールと同じようにローカル線のこれからのあり方を示してくれるのだと思う。


[スライドムービー「ほのかたび」]


・富豪刑事DX等に曲を提供しているオオゼキタク氏に「ほのかたび」という曲を作ってもらった。
ちなみにマツコデラックスに似ていると言われる。

・今日はせっかくの機会なのでこの曲とフォトを合わせたムービーを楽しんでもらいたい。

・鉄道の持つ魅力を「浪漫」と「記憶」というキーワードで写し取っている。

 

[まちの玄関口]


・日本全国を旅して色々な駅と出会う。
駅を見るとまちの雰囲気が見えてくる。まさしく駅は「まちの玄関口」といえる。

・北海道には板でできたホームしかない駅が数多くある。昔は仮乗降場だった。

・学園都市線・豊ヶ丘駅、五能線・驫木駅。

・只見線でホタルがいたので背景の信号とからめて撮影しようと思った。
ピントを合わせるのがなかなか難しい。
真夜中の真っ暗な中で絞りをF32まで絞って撮影した。
今のカメラはISO感度102,400というとてつもない値で撮影できるので写真家としては楽な時代になった。
フィルムじゃ絶対撮れない。

 

[わたらせ渓谷鉄道・上神梅駅]


・100年経った駅舎がそのまま残っている。
ヒサシやベンチがそのまま残っている駅舎。駅の中も荒れていない。
こういうところが荒れているところは町も荒れている。
地元に対する愛情があるかないかが非常に大きい。
100年もの間ガラスが割れずにいる駅舎というのは誇りに思っていい。
改札のラッチも昔のまま残っている。鉄道の原風景がそのまま残されている。
正しい日本のローカル線の雰囲気。

・関東では珍しいが、実は富山の人にとってはそんなにすごくない。近くにこういうのがいっぱいある。

 

[都電荒川線・町屋二丁目駅]


・東京にも路面電車が走っている。街は変わっても、人は意外と変わっていなかったりする。八百屋さんが現役で頑張っている。今はスーパーに行けば季節関係なく色々なものがあるが、ここには旬のものしか置いてない。八百屋ってこうだったよなぁ、っていうことを思う。便利になっていいものと失われていくもの、まちなみを探すことで結構気付く。

 

[都電荒川線・三ノ輪駅]


・新しい駅だけど、まちの雰囲気を壊さないようにしようということで木を使って立て直した。
電柱もわざと色を塗っている。
無機質にならないように。ボンカレーのホーロー看板なんかはちょっとやりすぎかと思う(笑)。
映画のセットみたいな雰囲気にも感じるが、
まちの雰囲気を作っていこうという意識はいいと思うし、
そういう想いがあると写真を撮りに行きたくなる。

・便利だったらなんでもいいってわけじゃない。
新しいまちでもちょっと工夫をするだけで、
まるで三丁目の夕日のような懐かしい雰囲気が感じられる。
そこにいる人たちが作り上げている雰囲気だと思う。

 

[小湊鉄道]


・いつか皆さんも旅してほしい。富山地鉄に負けないくらい素晴らしい駅がたくさんある。

[小湊鉄道・上総久保駅]


・ランドマークのイチョウが一本ある。非常に美しい風景。

[小湊鉄道・上総鶴間駅]


・昔ながらのラッチが残っている。
関東の駅100選に選ばれるくらい昔ながらの味わいが残っている。
夕日がちょうど差し込むとラッチの影が出てきて…感動して頭にサッカーボールがぶつかる。
地元の人が鉄道を盛り上げようとカカシをたくさん置いている。
見る人によってはかわいいって言ったりする。
お金かけなくてもいい、もてなそうという心が大事。小湊鉄道はそれを感じる。

[小湊鉄道]


・風景の中にブルーシートがあると雰囲気が壊れてしまう。
ブルーシートをブルーにした人は罪深い。

・ブルーシートがグリーンだっただけで雰囲気が違うと思うので、富山で条例を作ったらどうか(笑)。


[富山地鉄・寺田駅]


・富山の寺田駅は日本で五本の指に入る大好きな駅である。
今時駅前で子供が野球をしたりしない。
駅名板が旧字体でしかも右から読む。
立山線と本線の間にある昔は信号場だった薄水色の木造建物、これは非常に素晴らしい。
今すぐ重要文化財にしてほしいくらい。

・寺田駅のホームにあるケロリンの看板、さすが富山という感じでしびれた。
「ゆる鉄」という写真集の表紙に使わせてもらった。
昔ながらの駅の風景で、鉄道に興味がない人でもこれはいいと思ってくれるのではないかと思うのだが…。
手書きの「4番ホーム」、子供たちが線路を渡っていく光景、素晴らしい。

・相撲甚句が好きな駅長さんが居て、ロケに行った際にカメラを向けたら歌ってくれた。
後ろに電車が来ていたのにいいのかなぁと思ったけど、いいんだなぁと思ってスルーした(笑)。

・昔は中学生とか高校生の頃に旅をした時、寒い駅で待ってると
「休んでいきなよ」と声をかけてもらってよく事務所に入れてくれた。
ここには今でもそんな雰囲気が残っている。

・まるでセットに見えるが現役の出札。
待合室のベンチには「森永ドライミルク」しかも「ビタミン入り」。すごすぎる。

・改札口のラッチも何人もの人が通ったのか、
みんな手を触れるので擦り減って角が丸くなっている。でもそれを残してる。
好きで残しているのかどうかはわからないが、これを機に残して欲しい。
冒頭で紹介した番組では1時間こんな感じで写真を撮っている。
ぜひ家族とかに見てもらってなんとか残そう!という風になったら嬉しい。

 

[富山地鉄・西魚津駅]


・ここも古くて素敵な駅。柱のデザインが凝っている。
昔は予算がそんなにあったわけではないと思うが、土地の誇りというか、
人をもてなそうという気持ちによって非常に凝ったデザインをしている。
この時代に鉄道を引くということはものすごく誇らしいことだったのだと思う。

・現代の駅は便利だし快適だが、まるでカタログを見てこれにしようと選んだような感じで誇りが感じられない。
人がキーワードだと何度も言ったが、住民自らが土地や駅に誇りを持って良くしていこうと取り組むことで、
愛着のある駅、魅力のある駅になっていくのではないかと思う。

・なので、今こうやって残っている古い駅については、
上手に価値を分かち合って、理解して、残していく方向にしてもらいたい。
昭和の時代には日本全国で見られた私鉄の標準的な駅なのだが、
今でも残されているところは少ないので富山地鉄は貴重な存在である。
普通の人にとっては古い汚い駅かもしれないが、自分みたいな見地で見直してみると、
建築学的にも意味がある重要なものだと思う。
全部残すのは難しかったとしても、一部でも残ってくれるといい。

・それと、この駅にはまだ伝言板が残っているのがすごい。
今ではメールとかで簡単に連絡を取れるが、昔は伝言板だったなぁと懐かしい気持ちになった。
携帯も何もない時代ってどうやっていたのだろうと思うが、
これだけしかなかったので何も思わなかった。
そう思うと、ただ便利になるだけでいいのか…まぁいいのだが(笑)。

・昔の宿場町とかとか岩瀬みたいなところはみんなお金かけて直したりするのに、
こういう古い駅はわりと簡単に建て替えてしまう。
五百石駅なんかもシンメトリーでいい駅なのだが、
今度建て替えてしまうという話を聞いた。
確かに綺麗で便利になるからいいのだろうが、
実は非常に重要なものを簡単に壊してしまっている可能性がある。

 

[富山地鉄・有峰口駅]


・金文字の「出札口」が残っていてすごく雰囲気がある。
やかん、それと待合室の鏡が良い。昔は町の名士が鏡を寄付していた。これがまだ残っている。

・有峰口と千垣の間にある鉄橋も近いのでぜひ行ってみてほしい。
電車もゆっくり通って行くので撮影しやすい。ここの様子も番組で紹介するのでぜひ見てほしい。

 

[阪堺電気軌道・北天下茶屋駅]


・セットかと思うような駅前の街並み。
昔ながらのおばあちゃんがやっている駄菓子屋があって、それだけで一日いれる。
猫が出てきたり、たこ焼き屋のおばちゃんがいたり、こういう風景が残っていってほしい。
高齢化や後継者不在などもあって、その町の雰囲気を作っていた人たちが一人一人引退していく。
それに伴って風景もどんどん変わっていって寂しくなることを思うと、
そういうのを残そうという動きがあってもいいのかなと思う。


[富山ライトレール・城川原駅]


・今までたくさん古い駅を皆さんにお見せして、
古い駅が良いという風に言ってきたが、新しくてもいいものはある。
特にポートラムは昔の国鉄時代の写真を貼っていていいと思う。
ちゃんと昔のものに敬意を払っている。
駅の形としては非常に現代風で味気なく見えるが、
全体で見ると昔ながらのローカル線の駅のような温かみのある雰囲気が出ている。
応援メッセージが書かれたプレートもその一つ。

・赤字ローカル線を廃止にするのではなく、
増便してバリアフリー化する大胆な転換で新しい交通システムとして生まれ変わった非常にいい例。
昨日視察した際に、家にこもっていたお年寄りが出かけるようになって
まち全体が元気になっているという話を聞いて、とても素敵だと思った。

・赤字線をどうするかという話ではなく、鉄道という線路を中心としてまちを作り上げていく、
なんて素敵な都市なんだろうと感じた。

・一方で、こういう風なことができたのは奇跡的なことだったのだろうとも思う。
もともと路面電車に慣れ親しんでいる富山の人たちの気質もあるし、
新幹線整備に関連して行政の支援もあったこと、
JRから無償で富山港線を譲ってもらったこと、
そういった様々な条件があってライトレールが生まれたと思うので、
色々なところから視察に来るということだが、なかなか第二号が生まれないのだろうなと思う。
富山から生まれたこの動きが広まってくれることを強く願っている。

・恥ずかしながら、富山港線が廃止になると聞いたとき、
旅情がなくなってしまうのではないかとガッカリした自分がいた。
けれど、こうやって一つ一つ駅を見させてもらっていくと、やはり温かみがあることがわかった。
やはり鉄道というのは人が動かして人を運ぶものなのだなと思う。
人がその鉄道を愛していれば、それが古くても新しくても素敵な雰囲気になる。


[スライドムービー「浪漫鉄道」]


・作ったはいいが、見せるチャンスが少ないので今日は貴重な機会である。

 

[まとめ]


・鉄道という四角い箱が好きで撮影を始めたのだが、最近はそれを動かす人にとても興味がある。
僕が写し止めたい鉄道の旅情というものの鍵も、人にあるんじゃないかと思っている。

・綺麗なまちや綺麗な駅を作るということも、やはりそこに住む人にかかっているんじゃないかと思っている。
先ほどの駅舎の柱の話のように、一人一人が誇りを持って、愛情を持って、
ほんの小さい努力でいいので、美しくしようとするだけでも風景は変わっていくと思う。

・これからまちを作っていく立場の方々においては、
ただ闇雲に新しいものを作っていくのではなく、これまであったものに敬意を表しつつ、
ライトレールのように新たな未来に向かって、過去を断ち切るのではなく、
過去を尊重して伸ばしていく形でまちを作っていってほしいと思っている。

・何より、今日の話を聞いて鉄ちゃんになったと思うので、
明日のお休みの日に富山地方鉄道やライトレールに乗って、旅をしてもらえたらなぁと思う。



(以上)

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